【イベント報告】「保育園の『保育の質』って何だろう」(3) なんでもQ&A

2022年11月5日(土)14時30分~16時30分、保育園を考える親の会は「東京都ウィメンズプラザフォーラム」の参加イベントとして、ワークショップ「保育園の『保育の質』って何だろう」を開催しました。

その内容を3回に分けてお届けします。3回目は、会場との質疑応答「なんでもQ&A」を取り上げます。

(3) なんでもQ&A

事前に寄せられた質問や会場で出された質問を取り上げて、パネラーや世話人に答えてもらいました(一部割愛)。

Q1 保育園選びをどう考えたらよいか

【渡邊】保育園を考える親の会のホームページの「保育園選びのチェックポイント」 はぜひ参考にしてください。

実際、園に足を運べば、先生と子どもの様子が見えてくると思います。建物は古いけれど子どもたちは元気だとか、子ども中心の保育ができているかどうかなど。複数か所見るとわかることもあります。建物のきれいさなどよりも、保育の中身を重視して選んでいただきたいと思います。

【鈴木】保育者としてはいろいろありすぎて言えないのですが、保護者として考えると通園に無理がないことも大切かなと思う。園庭の有無も大切だけれど、ないのなら近所に公園があるかとか。絵本コーナーが整えられているかもぜひ見てほしいです。多少傷んでいてもいい、子どもたちがよく手にとっている証拠なのでよいと思います。やはり複数見ると、違いがわかると思います。

【山本】風通しよさが大切という話が出ていましたが、ではそれはどこでわかるのか。見学や問合せをしたとき、ホームページを閲覧したときに、利用者目線で保護者が知りたいことが開示されているかがポイントだと思います。訪問したときや電話で話したときにも、伝えようとする姿勢が感じられるか、一方的な説明になっていないかなど、インスピレーション、第一印象でわかることも大切にしていいと思います。

【世話人】息子は2015年生まれで、保活厳しい時でした。私は、利便性だけでなく、地元の評判、園の雰囲気とかを聞きながら選びました。通園には片道40分かかりましたが、子どもといろいろお話ししたり、マナーを教える時間になったと思っています。

【普光院】園内を見られたら掲示物も見てください。保護者に保育の意図を伝えることを大事にする園がふえています。子どもたちのようすがわかるように写真を掲示して「こんなこともできるようになりました」と説明されていたりするのもいいなと思っています。

あと、父母会・保護者会があると敬遠する人もふえているようですが、私は、保護者のつながりがあった方がよいと思っています。何か園について疑問をもっていて親の会に相談してこられる方に、「他の保護者は何と言っていますか?」と聞いても、他の保護者と話したことがないということで、一人で不安になってしまっているケースがある。保護者同士で園への不安や疑問、反対によかったことも共有できるようなつながりは大切だと思います。園のよい取り組みに「あれよかったねー」と保護者が共感しあうような関係があれば子育てを支えられるし、保育の質を高める要素にもなると思っています。

Q2 在園している園に、教育方針の違いや不安を感じたとき、どうしたらいいか。園とのつきあい方は?

【渡邊】園と保護者の間のちょっとしたボタンの掛け違いから問題が大きくなることもあります。私がお世話になった園ではコミュニケーションをとる場として保護者会がありました。何か違和感を感じたときもまわりの人の意見を聞けたり、そこで違う見方ができることに気づけたりできるのはよかったと思います。今の保護者がつらいのは、コロナの影響もあってコミュニケーションが圧倒的に不足していることではないかと感じています。意識して保護者同士でコミュニケーションをとってみたり、自分から関係を作ってみるのもいいのでは。

【鈴木】何か気になることがあればまず担任に話をしてほしいと思います。連絡帳のやりとりは面倒という声も聞くけど、家庭であったことを書いてくれると、それがコミュニケーションのきっかけとなったりします。担任に言いづらかったら主任とか園長とかに相談を。思い切って話ししていただくのがよいと思います。

【山本】保育園は児童福祉施設なので、いろいろな家庭の子どもが在籍しているということを前提としなければならない。園を選んだ理由も、教育方針が気に入ったという場合もあれば、ただ家の近くだったとか、ほかに入れなかったからとか様々だと思います。なので、園が保育に独自性を出しすぎるのもよくない、家庭の方針とぶつかってしまうほどの独自性というのはいかがなものかとも思います。そんなに大きなことでなければ、単に説明不足、対話不足ということもありますので、もっと対話をすることが大切かと。園に声をかけづらかったら、アンケートとか投書とか保護者同志の情報交換などを通して伝えていただくのもよいのではないかと思います。

【普光院】教育方針の違いといっても、子どもに必要なことにはそんなに違いがあるわけではないと思います。保育所保育指針は、保育園が一人一人の子どもの発達や興味・関心を見通して保育することを求めています。園には、今子どもたちはこういう段階だから、とか、クラスはこんなことに興味をもっているから、こういう保育を展開してみようとか、そういった保育の意図というものがあると思うのですが、それを家庭が納得できる形で説明できていないのかもしれません。もう一度、よくコミュニケーションをとって見る必要があるかも。

子どものためによくないということがある場合は、担任に相談してみる、とても相談できない感じなら主任・園長に…、園長にもとりあってもらえないという場合、不適切保育など事が深刻である場合は役所に訴えてもよいと思います。

Q3 保護者同士の交流が大事という話があったが、何か問題が起こってからではもめそうで心配。交流を始めるためによい方法はあるか。

【渡邊】あまり気を追わずに気軽に考えてはどうかなと思います。私はお酒が好きなので、最初に子どもが2歳児クラスのときに飲み会を企画したら、思いがけず全員が家族づれで集まったということがありました。今もいろんな愚痴を話せる関係が続いています。最初はわちゃわちゃ楽しむという感じでつながりをつくるのもいい。PTAをつくろうとか大袈裟に考えてしまうと、考え方の違いも出てきてうまくいかないのではないかと思います。

Q4 公立園と民間(私立)園の保育の質の差はあるのか?

【山本】基本的には、園による違いのほうが大きいと思っています。認可保育園の枠組み、安全や衛生の基準、職員配置基準などは公立も私立も同じなので、大きな差はないと思う。ただ、公費から出ている運営費、お金の使い方は園によって異なります。職員の割り振りだとか施設の整備のためのお金をどこに配分するのかなどは園による。公立園は横並びで、一定の質は担保される傾向があると思います。一方で私立はばらばら。個性があるので、それがぴったりはまるという場合もあるし、逆に合わない場合もあると思っています。

【普光院】私も園によると思う。私立は個性があり、ものすごく志しがある園と、これはどうなのと思う園の差が大きいことを実感しています。会に寄せられる困った相談も民間園が多いのは事実です。公立園の職員は公務員なので辞めないのでベテランが多いです。ベテランならいいと限りませんが、ある程度、危ない保育をしない、リスクが少ないということは言えるかもしれません。

Q5 民営化して1年目の園を選ぶとき気を付けた方がよいことは?

【普光院】私は、公立保育園には地域のセイフティーネットとしての役割があるので安易に減らしてほしくないという思いがありますが、保護者にとっては、自治体が民営化してどのような事業者に委ねようとしているのかが重要だと思っています。その事業者が運営している他の園を見るのもよいと思います。民営化1年目は混乱しがちで、以前からの在園児保護者と新しい事業者との関係がこじれるようなことがあるのも事実です。ただし、その事業者にやる気があれば保育の質を上げることもできるので、やはり事業者の質次第かなと思います。

【山本】私の娘の時も民営化を経験しました。入園前から民営化されることがわかっていましたが、受ける事業者に期待感があったので入園しました。園、役所、保護者の三者協議会があって、非常に良好な関係でした。入園させてよかったと思っています。

Q6 山本先生から保育園は児童福祉施設だから特徴をもつのはよくないという意見があったが、幼稚園はいろいろ特徴をもっていると思う。保育園と幼稚園は違うのか?

【山本】保育園は入園のときに自治体の利用調整があったり、保育料も応能負担といって所得に応じた保育料が決められていたりするわけですが、幼稚園は各園で募集があって直接契約で入園する、保育料も各園がサービスに応じた保育料を自由に決めています。家庭は幼稚園に対しては選んで入園しているという意識を強くもっていると思います。園のほうも保育の特徴を強調して園児を募集する傾向があり、そういったところが保育園と幼稚園の大きな違いかなと思います。それが子どもに合うところがあると思うのであれば、それを選ぶのはよいことだと思います。

Q7 山本先生からお聞きした調査に関して、保護者は最初スペック面に注目が行き、入園後に保育を経験する中で保育の質に注目が移るという話があったが、保護者が最初から質に注目するにはどうしたらよいか。

【山本】どうしたらよいのでしょかねえ(笑)。業界としては保育への取り組みや運営のことをオープンにしていく努力はしていると思います。特に近年インターネットを利用した発信などの取り組みは進んでいるのかなと。現在はまだ待機児童もあり、保護者が細かく園を選べないために、マッチングが進んでいない状況もあるのかなと思います。

【渡邊】質ってふわっとしてわかりにくいテーマ。保育所保育指針をていねいに読み込めばすごくいい保育ができるはずなのに、園によって差があるという現実があります。保護者も指針に関心を持ってほしいと思います。子どもの主体性を育てる保育が今重視されているのですが、それはどうやったら育つのか。たとえば、私が視察した中には、保護者の希望に応えて英会話を取り入れている園などもありましたが、子どもの遊びを断ち切るように英語が始まったり体操が始まったりして、子どもは今自分がやっている遊びを遊びこみたいのに…という状況が往々にしてありました。どんな環境にしたら子どもが楽しくわくわくできるのか考えてみる、親も考えてみることが大事かなと思います。

【普光院】教育をどうとらえるかが大切。過去の研究に、運動指導を熱心にやっている園と自由遊びが多い園を比べたら、自由遊びが多い園の園児のほうが、運動能力の測定結果が高かったというものがあります。子どもが楽しくて夢中に体を動かせば、いろんな動きをするし自然に目一杯動くので、それだけ力が育つということだと思います。座学で先取りして文字や数を教えたりすることは、本当にこの時期の育ちに合う教育なのかどうか、遊びや生活の中で子どもをわくわく楽しくさせる、そういう環境を提供してくれる園が本当に教育的な園なのではないかということも、視野に入れる必要があると思います。

その保育をつくるのは保育者であり、その保育者が主体的に生き生きと保育に取り組めるようにするためにはどうしたらいいか、今日は十分に掘り下げられませんでしたが、私たちの課題としていかなければならないと思っています。

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