【イベント報告】「保育園の『保育の質』って何だろう」(1) 基礎知識レクチャー

2022年11月5日(土)14時30分~16時30分、保育園を考える親の会は「東京都ウィメンズプラザフォーラム」の参加イベントとして、ワークショップ「保育園の『保育の質』って何だろう」を開催しました。
その内容を3回に分けてお届けします。1回目は、保育園を考える親の会顧問・普光院による基礎知識レクチャーです。

(1)  基礎知識レクチャー

語り手:普光院亜紀

 OECDは、幼児保育の施策の提言であるスターティング・ストロングⅣ(2015年)において、保育の質の包括的定義として「子どもが心身ともに満たされ、より豊かに生きていくことを支える環境や経験」ということを挙げています。
ここでいう保育とは、養護と教育のこと、care and educationです。careを日本語の「ケア」と訳してしまうと、「お世話」になってしまうのですが、子どもの保育におけるcareにはもっと広い意味が含まれています。

 OECDのスターティング・ストロングⅡ(2006年)では保育の質の諸側面として「成果の質」「プロセスの質」「実施運営の質」「保育の概念と実践」「構造の質」「志向性の質」を挙げています<邦訳は「『保育プロセスの質』評価スケール」(イラム・シラージら著、秋田・淀川訳、明石書店)による>。
 次図は、それぞれの側面と、その側面を支える日本の保育制度との関係を私が図にしたものです。原典には、このようなピラミッド構造は描かれていませんが、下から上に支えていくというイメージで描いてみました。

(図および図中の解説は「Starting Strong Ⅱ」の記述を参考に普光院が翻訳・作成)

 保育園の「教育(保育)の概念と実践」を示しているものとして、保育所保育指針があります。指針は、保育を「養護と教育を一体的に展開するもの」と定義し、養護(care)として生命の保持と情緒の安定、教育(education)として、健康、人間関係、環境、言葉、表現の5つの領域を示しています。保育において、命が守られ安心できる養護がしっかりあってこそ、教育つまり5領域の発達が豊かに促されるという関係があります。

 たとえば、0歳児。マットの上をハイハイする子ども。先生が不思議なおもちゃを振って呼んでいる。それにさわりたいと懸命に体を動かすことで、脳から筋肉、その他のさまざまな機能が相互に触発するように発達する。その原動力になるのが、子どものもっとやりたいもっと知りたいという気持ちと安心感です。なぜ子どもは安心できるのか、それは保育者がいるからです。安定した情緒のもとで主体的に活動する、活動とは遊びのことですが、その環境を提供するのは保育者であり、それが教育なのです。幼児期には、子ども同士のかかわり、けんかやごっこ遊びの中で自己主張をし、言葉で表現する力、相手を理解する力が育ちます。子どもの社会性が育つ大切な時期です。その環境を保障するのも教育であり保育者の仕事です。

 多くの保育園で、このような保育所保育指針に基づく保育を実現するために努力してくださっていると思いますが、親の会には不適切保育に関するものなど、残念なご相談もあります。これから保活の方は、保育の様子を見たり、園長と会話し、どういう考えを持っているのかを確かめて、園を選んでいただきたいと思います。
 選ぶときの視点として、もう少し引き寄せて描いたのが、次図です。

 保育園を考える親の会のホームページの「保育園選びのチェックポイント」 も参考にしてください。

 <続き> イベント報告「保育園の『保育の質』って何だろう」(2) は保護者・保育士・園長によるパネルディスカッション(3)は会場との質疑応答の内容を掲載します。