ズボラ母さんの夕飯必勝法とは… 

わが家の6歳男児は食わず嫌い。しかしテレビや絵本でおいしそうに紹介されていたり、従姉やお友だちが食べたというエピソードを聞きつけたりするや、即座に自分も「食べたい!」となる。そしてそこから一転、大好物になったりもする。かのシモーヌ・ド・ボーヴォワールも幼少時代は、キラキラ光り輝くガラス容器に入った、彩りの美しいキャンディーのみしか興味を示さず、食事ではかなり親たちを手こずらせていたとのことだから、まあ子どもというのは多かれ少なかれアタマで考えてから食べるものなのだろうと思う。昨今のアレルギー事情などを考えると、「これをとり入れるのは自分にとって危険」という意識があること自体は悪くない。  ……と、まぁこちらもアタマでは理解しているのであるが、いざ毎日の食事となると、そう悠長なことも言っていられない。よっぽど本人お気に入りのおかずでない限り、夕飯時は、食べ終わる旨の暗示が、決まって最終的には「早く食べなさーい‼」という怒声に変わる。お気に入りのおかずとは、餃子、から揚げ、麻婆茄子、鉄板焼き……本人曰く「あぶらのもの」、せいぜいが親子丼と、困ったことに今からすでにがっつりパワー系男子メシを予感させるようなものばかりなのである。

 仕事をして疲れ果てている身としては、保育園降園後のスーパー入店時には、よし、まともなモノを作ろう、と意識していても、うっかり気づくとこうした「あぶらのもの」のひしめく総菜コーナーに突っ立っていたりする。アブない!アブない!子が子なら母も母。持ちつ持たれつのぶらさがり合いになっている姿に我ながらゾッとする。

 そんな情けないわが家の食卓事情なのであるが、2年前の夏、ふと思い立って作ったサラダが子どもに大好評。うまい、早い、安いに加えて栄養価が高い(はず)という、ズボラかつ欲張りを叶えるための自分なりの勝利の方程式を手にし、ひとりほくそ笑む私。これでおかずが「あぶらのもの」でもなんとか野菜も十分摂れるはず。そんな副菜のレパートリーを徐々に増やして、いつしかそれらを使い回すまでになった。おかげでサラダを食べることに初めは抵抗していたわが子も、いつしか当然の義務として(!)野菜を食べる習慣が身についた。

 副菜のレパートリーが増えたら、今度は主菜だ。最近これも思いつきで作った鶏もも肉とピーマンの照り焼きがまたまた好評。翌日の買い物では「また昨日のつくって」と、子ども自らピーマンをカートに入れてきたのには内心笑いが止まらなかった。しめしめ、母の策にかかりおったな。しかしそれは母の手柄というよりも、今時分のピーマンのおいしさのおかげなのであった。

 何てことのない名もない家庭の料理でも、こうした自分たちなりの勝利の方程式を見つけることで、そのウチの食卓が形作られていくのだなあ、と身にしみて感じるこの頃。……などとエラそうだが、相も変わらず夕ご飯までの「つなぎ」は、麺つゆを薄めた中に正方形のパック入り絹ごし豆腐を一丁、文字通りブチ込んで、レンジで1分チンしただ

けの究極のファーストフードだ(余裕があれば刻みネギ入り)。これを喜んで毎日帰宅後「ママー、お豆腐つくって!」とねだられるのは、うれしいやら、情けないやら……。

レシピ

鶏もも肉とピーマンの照り焼き

材料(3人分)

  鶏もも肉………………300~400g

  ピーマン………………6~8個

  みりん、しょうゆ……大さじ2程度

  片栗粉…………………適量

作り方

 ピーマンはタテ半分に切って、上のヘタのみ取り除き、できればワタとタネはそのまま残す。焼くとタネのおいしさに開眼します。 

 鶏肉を一口大に切り、中火で2分程度、皮目から焼く。必ずフライパンに蓋をして焼くこと。

 皮に焼き目がついたら返し、ピーマンを加え、蓋をしたまま蒸し焼きにする。これによって肉によく火が通り、ピーマンもより一層おいしくなる。

 すべてに火が通ったら、一度弱火にし、みりん、しょうゆを加え、味を見て再び中火にする。

 片栗粉を足してとろみをつけ、味をからめやすくする。水溶きするのも面倒なので、そのまま振り入れることのできるタイプがおすすめ。
バーベキューの要素に甘辛いたれがかかっているので、子どもは大喜び。ピーマンのほうを食べたがります。
大人には一味とうがらしをかけると味にアクセントがつきます。 

 

レシピ

スプラウトとカニかま、プチトマトのサラダ 

 以前フランス人とのホームパーティーで知った「大根とかいわれと帆立のサラダ」を、子どもにも食べられるようにアレンジ。手近な材料で、あまり包丁を使わずに3分以内で作ることができます。 

材料(3人分)

  ブロッコリースプラウト……2パック  

     プチトマト……6~8個

  カニ風味かまぼこ(よりリアルで割きやすいものを。もちろんカニ缶でも)…適量 

作り方

 野菜を洗い、トマトは半分に、ブロッコリースプラウトは根元を切る。

 カニ風味かまぼこを適当に割き、少量のマヨネーズと塩で和える。

レタスやサニーレタスを足せばかさが増します。

最近はえごま油(または亜麻仁油)と、ノンオイルドレッシングとの組み合わせがお気に入り。オメガ3系オイルのおいしさを余すことなく味わえて、まったく義務感なしに楽しめます!

アボカドを入れるとコクとボリュームがアップ。デパ地下サラダに負けない迫力になるので、来客があるときには断然こちらで。

 

*児童育成協会「こどもの栄養」に会員が交代で執筆した連載を再掲載しています。