クリスマス会の主役は?

娘が通っていたのは、キリスト教系の私立保育所で、12月にはクリスマス会が行われ、園全体が準備で盛り上がります。年長クラスを中心に、イエス誕生の場面を再現する「聖劇」は、会の見せ場。配役は毎年、親もドキドキ、ヤキモキと聞いていました。

娘は「マリア役がやりたい」と年少時代からひそかに思っていたらしいのですが、主張を通すのがあまり得意ではないため、みんなの前で希望をしっかり口に出せるかどうかが、そもそもの課題でした。

担任の先生の丁寧なセッティングで、初めて子ども主導の話し合いと役決めが行われました。娘は希望を言うことができ、幸いにも念願の役をゲットすることができました。ホッとしたものの、練習ではマリア、ヨセフ、3賢人の博士と出番の多い役の子同士でも小競り合いがあったそう。「主役は(マリアじゃなくて)博士だよ」、と言われたとか、言われないとか……。

互いを思いやりながら役を決められたり、急に我が強くなってイジワルを言ってみたり、揺らぎながら育つ子どもたちの様子が身近に感じられる時期でした。

会も近づいたある日、ふと、本人に聞いてみました。「クリスマス会の主役って誰だと思う? マリアかしら、博士かしら、それともヨセフかな」。

すると、「ママ、何言ってるの? 主役はイエスさまに決まってるじゃない!」と怪訝そう。拍子抜けして、笑ってしまいました。そうだった、はい、そうでした。大人の思惑やエゴをよそに、娘なりにしっかり物事の意味をとらえ、育っているんだな、と強く思った一言でした。