子育てと仕事に追われる日々に、我が家の食卓に母との思い出が顔を出します。母から貰った最大のプレゼントは、いろいろな国の料理や食材が並んだ食卓でした。小さい頃の思い出には、いつも食べ物が出てきます。大人になって、世界25か国以上で仕事をしてきて、時には僻地で孤独な海外生活を楽しむことができたのは、子どもの頃に食卓に出てきたいろいろな食べ物を現地で現地の人と一緒に食べることでした。そして、食べ物を通じて、世界で仕事をし、生活をしていく人生を歩み続けることになったのです。
娘が生まれたときに、母が私にしてくれたのと同じように、世界のどこに行っても「食」に興味を持って楽しんでほしいと思いました。そこで、離乳食から、アレルギーには気をつけながら、日本のものだけでなく、いろいろな国の食材を使って食事を作っています。作った食事を通して、食についてだけでなく、私が初めてその食事をしたときの思い出や、その国の文化について、娘と会話するきっかけになっています。
食育というと、食文化の継承や健康のために食や食習慣について自ら考えられるようになるための学習を指します。しかし、これがとても難しいもののように思えたので、私は、もう少し気楽にとらえて、「おいしいね~」「これってなんだろう?」と、子どもが食べることに興味を持ち、自分で感じて、体験する場と捉えました。
毎日の食事を通じて、母が私にしてくれたのと同じように、地域のものを中心に、いろいろな国のものを少しずつ取り入れ、娘が満足感だけでなく、好奇心も持ってくれる、そんな食卓作りを目指しています。
0歳で離乳食後期の娘は、料理の説明をひととおり聞いてから、いただきますをして、ご飯を食べます。色が違う料理や、食感が異なる食材に、「おぇ~」となったり、にこにこ笑ったりしながら食べています。
例えば、ロシア料理でよく使われるビーツ。ボルシチに作って出したときには、その赤い色に反応して、手をスープ皿に突っ込んで大喜び。「スタイに血が?」と思うほど真っ赤なシミを残しました。
最近日本でも見かけるようになったルバーブを食べたときには、黄緑色からは想像できない酸っぱさに、顔をくしゃくしゃにしながらも、その刺激的な味に魅せられたのか、おかわりを催促。私が大好きなルバーブを娘が好きになってくれたのがとても嬉しかったです。そんな毎日違う表情を見るたびに、心の中が幸せな気持ちでいっぱいになり、心もお腹も満足な食卓になっています。
ここに紹介するリボリータは、フィレンツェに留学したときに、ルームメートから教わったトスカーナの家庭料理です。リボリータとは、煮込みなおしたという意味で、食べるスープのことを指します。硬くなったパンや残り物の野菜を何でも入れて煮込んだスープなので、イタリアの他の地方ではリボリータと言えば貧乏人の料理と言われているそうですが、慣れないイタリア語で必死に暮らしていた私を温めてくれたお財布にもお腹にも優しいスープでした。食べ残したパンや野菜やお肉を入れるだけのお手軽料理です。栄養バランスも良いので、仕事で忙しい週にはよく登場する時短の一品です。
バゲットかパン…………1/3程度
じゃがいも………………1個
玉ねぎ……………………1個
セロリ……………………1/4本
カリフラワー……………1/5個
豆もやし…………………1/5袋
カーボロネロ
(キャベツで代用可)…5枚
小松菜……………………2枚
しいたけ…………………1個
ひき肉……………………大さじ3
パルメザンチーズ………少々
塩コショウ………………適量
オリーブオイル…………大さじ3
片栗粉(離乳食用)… …少々
注:野菜は家にあるものなんでも大丈夫です。今回入れたものを掲載しております。
❶ すべての食材をみじん切りにする。
❷ お鍋にオリーブオイルを入れ、玉ねぎ、セロリをよく炒める。
❸ 残りの野菜とお肉を❷に加えてよく炒める。
❹ 水を野菜がかぶるくらい入れて、強火で煮立ったら弱火にしてあくを取る。
❺ あくをとったら、パンを細かく切り、スープに加える。
❻ 1時間ほど煮込み、パルメザンチーズを加える。
❼ 子ども用に取り分けた後、大人用に塩と胡椒で味を調える。
❽ 子ども用(我が家は離乳食用)に食べやすいように、片栗粉でとろみをつける。
*児童育成協会「こどもの栄養」に会員が交代で執筆した連載を再掲載しています。