ある日保育園から帰った子どもが、私に問いかけた言葉だ。とても大事なことなのに考えられていなかった。そうだなあ。リビングの机は低すぎて隠れられないし、物が少ない場所がいい。「廊下に逃げよう！」そう答えた。
数ヶ月後、その日は突然やってきた。リビングで慌ただしく登園準備をしている午前7時58分。突然の強い揺れ。私はとっさに子どもを抱えて廊下へ逃げ、子どもを抱きしめながら揺れに耐えた。子どもも暴れることなくぎゅっと私にしがみついていた。2018年の大阪府北部地震。緊急地震速報も間に合わない、震度6弱の地域だった。幸い、家族全員なに一つけがは無かった。
私が素早く行動できたのは先の子どもの問いのおかげだし、子どもがパニックにならなかったのも、保育園で頻繁に避難訓練を実施してくださっているおかげだと強く感じた。「保育園で地震が起きたら、机の下に隠れるねん。津波が来そうやったら小学校に逃げるねん」。3歳の子どもがきちんと説明できるほど、丁寧に指導してくださっていたのだ。あの地震から一年以上経つが、時々子どもが「地震が起きたら……」と言ってくれるので、その度につい忘れかけていた防災意識が改まり、気が引き締まる。