指導監査を実地で行う義務づけを緩和する政令改正についての意見書(2022.8提出分)

国は、2022年8月2日、自治体が保育所等の指導監査を実地により行うことを義務付けた政令(児童福祉法施行令)を改正する案(2度目)を示し、パブリックコメントを募集しました。

2021年12月24日に示された前回の案(実地義務を廃止)と比べると、実地で行うことを原則とすることを明記しつつ、書類のみでもよい場合を列挙する形にはなりましたが、保育園を考える親の会では、これにより自治体格差が広がったり、実施率が下がったりすることを懸念して、再び意見を提出しました。(前回意見書はこちら


2022年8月31日

「児童福祉法施行令の一部を改正する政令案 」についての意見書

保育園を考える親の会
代表 渡邊 寛子

2022年8月2日付でパブリックコメントが募集された標記の件について、保護者の立場から以下のとおり意見を申し上げます。

■実地による指導監査が求められる現状
実地による指導監査(以下、実地検査)の重要性については、前回、パブリックコメント募集の際に提出した当会の「児童福祉法施行令の一部を改正する政令案に関する意見」(2022年1月21日)に記しているとおり。
本年7月には、大手の保育事業者が保育士を水増しして運営費を不正受給していたことが発覚した。この問題は東京都の特別指導検査で明らかになったが、東京都の指導監査の実施率は非常に低く(8.2%、2019年度)、このようなことが蔓延している可能性もある。
保育園を考える親の会にはその後も、保護者はもちろん、自治体の担当者や事業者からも「実地は必要」との声が届いている。自治体担当者は業務を遂行する中で必要性を感じているということであり、事業者からは「年に1回見てもらえることで気が引き締まる」「外部の目で基本的なことをチェックしてもらえるので助かっている」という声もあった。
このような実情を踏まえた検討が必要と考える。

■自治体格差を拡大させるおそれ
この改正は、2021年度の地方分権改革提案募集において、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止等の観点から実地検査の実施が困難であるという理由で、自治体から提案されたものだが、2019年度の指導監査の実施状況を見ると、実地検査の実施率は62.5%にとどまっており、コロナ前からすでに政令違反となっている自治体が多数存在していたことがわかる(国内で新型コロナ感染症の発生が確認されたのは2020年1月、緊急事態宣言は4月)。


この一方で、実地検査を100%実施している自治体も約半数ある。ここには、子どもの安全・安心を守る指導監査業務に対する自治体の意識の差が現れており、意識の薄い自治体からの提案を受けて監査の基準が緩和されることには疑問を抱かざるをえない。ここで国の基準を緩めれば、自治体による差がますます大きくなっていくことが予測されるが、子どもの受ける保育の質を守ることに地域格差があってならないのではないか。

■例外要件への要望
「改正の概要」によれば、政令案には、
引き続き実地検査 を原則としながら、例外的に、
・天災その他やむを得ない事由により当該年度内に実地検査を行うことが著しく困難又は不適当と認められる場合
・前年度の実地検査の結果その他厚生労働省令で定める事項を勘案して実地検査が必ずしも必要でないと認められる場合
には、実地によらずとも検査を実施できることとする。
とあるが、これらの例外要件が拡大解釈されることを懸念し、次のことを要望したい。
・1点目の「やむを得ない事由」に職員不足などが含まれることがないようにしていただきたい(必要な事業の予算は確保すべき)。
・2点目の「実地検査が必ずしも必要でないと認められる」範囲も自治体によって運用がまちまちになるおそれがある。また、実地検査が2年に一度でよいということになれば、現在100%実地検査を行っている半数の自治体も検査回数を減らすことになる。施設の状況は年々変化するものであり、職員の入れ替わりなどもある。2点目の要件については削除をお願いしたい。

■実質的に子どもを守る対策を
すでに指導監査の実施率が低い自治体に対して、国として実施を求めていただきたい。
国は、各自治体の指導監査の実施率を監視するとともに、本改正により実施率が低下しない対策を十分に打っていただきたい。
保護者や関係者からの苦情や内部告発などがあった場合には、指導監査部門が窓口となり、市町村と連携して事実確認を行うことを必須として通知していただきたい。

以上、子どもの安全・安心を願う保護者の立場から述べさせていただきました。
来年4月には、「こどもを真ん中」を謳うこども家庭庁の発足を踏まえ、その趣旨に違わない改正としていただきますよう、切にお願い申し上げます。

(問い合わせ先)保育園を考える親の会
https://hoikuoyanokai.com/contact/

意見書のPDF版はこちら