保育の質について求めること

代表・普光院が「保育の質」に関する国の検討会に参加するにあたり、発信してほしいことを会員にアンケートでお聞きしました。働きながら子どもを育てる立場から「現実を見て!」と警鐘を発します。(2018年6月保育に関するアンケートより)

 

[保育の現状やあるべき姿について]

● 保護者は保育の狙いや内容(専門性)を理解し、尊重すべきだと思うし、そのためにも、保育園・保育士は園の方針や日々の様子をできる限りオープンにするのがよいと思います。保育園と保護者が信頼し合うことがとても大切だと思います。

●サービス合戦を強いている園はとにかく保育士さんが頑張りすぎて疲れ切っています。「お帰りなさい、○○様」と言わせたり、保護者はお客様扱いと教えたり、クレームが出ないよう傷物腫れ物を触るような毎日だったり、行事に口出しされるので残業して準備したり、劇の主役が6人も居たり……異常です。

●これ以上中身のない保育園等ができても意味が無い。しっかりとした保育士の育成や園長になる人材の適性なども検討して欲しい。親としては切実。

●保育士に余裕がないと、きめ細かな対応が難しく、多様性ある個性が育ちにくくなると思います(特に3歳児以降)。単に日中預ける/生活ルールを教えるなどではない役割が保育にはあると思いますし、その点も考慮して保育士対子どもの比率を考えて貰いたいです。

●幼稚園の園庭の広さとの格差があり過ぎて、その格差を園庭開放などで解消すべきと感じています。幼稚園は保育時間が短いのに、かなり園庭が広いです。たくさん使っているのでしょうか? 保育園に通わせている親としては不公平に感じることがあります。スペースの問題は共有で解消はできないのか疑問です。幼稚園のニーズは保育園に比べても多いのでしょうか? 共有化したりすることはできないのか疑問です。

●子育て支援として、保護者の交流の場の機能も保育所の役割だと発信して欲しい。近所の関係などが希薄になっている現代で保育所の中では先生が見守れるが、外では大人が子どもを見守る地域を作っていきたい。孤独な子育てをする親を救うためには、先生の協力も必要だけど、共に子育てを戦う仲間も必要。子育てを協力し合える仲間を作る手伝いをしてほしい。核家族の世の中なんだから尚更。虐待や産後ウツの防止にも人と人の出会いは必要。人の子どもの成長も見守り、自分の子どもの成長も見守っていける地域をつくるために保育所はあるべきではないてしょうか。

●保育所での子どもの生活、遊び、できごと、やり取りはほとんど親には見えません。子どもから話を聞く、連絡帳、お便り、掲示板を見る、半年に一度の保護者会と年に一度の個人面談程度です。子どもがどんなことに興味をもち好奇心を高め学んでいるか目には見えないことを、保育士という専門家から保護者に発信し、開かれた保育をスタンダードにしてほしいです。先生方においても発信するという過程を通して子どもの育ちや自身の保育に対する気づきがかない保育者同士で共有したり対話したりすることで質の向上に繋がると思います。園の保育と保護者の子育てがより一体感をもってできれば相互作用も生まれ、きっと子どもが育つ環境が今よりよくなると思います。そうした保育の質向上に繋がるような観点で補助金施策等を柔軟に見直して頂きたいです。(現在の施策、特に無償化などは硬直的であまり魅力を感じません。)

●預ける側も、預かる側も、全力で必死で、だからこそちょっとした何かで互いの間に大きく溝ができてしまうのが残念。批判や愚痴を吐ける機会、場所が、両側において、大なり小なり社会の規模如何にせよ、個々に不足しているし、またそうしたくても、敷居の高さを感じ敬遠してしまったり、余裕すらないほど日々の生活に追われてしまって、全部がどうでもよくなってしまってたりする。国民全体、精神的余裕を作らせない、産み出せない何かが根底にあるように感じられる。

●育休退園で、退園した家庭の大変さ、子どもは園にいたときよりも就寝起床リズムが崩れ、メディア視聴時間が増えている現実について、国から自治体に働きかけをしてほしい。退園するか否かを家庭で決めさせてほしい。また退園した場合の、次の保活でのポイント加配などで利益誘導するのは、子どもが犠牲になるのでやめさせてほしい。子どもの最善の利益を考える行政であるべきと通知をしてほしい。

●保育園は「子ども預り所」ではありません、子どもたちは迎えが来るまで荷物のようにただじっとしているわけではありません。子どもたちが保育園で健康な生活習慣・身体・心をしっかり身につけること、いろんな子どもがいる中で経験や成長することは本人の将来にとっても国にとっても重要だと思います。保護者の就労などによってでなく、子ども自身のために必要であればどんな子どもでも利用できる仕組みに変えてください。

 

[保育士の待遇・地位の向上について]

●子どもの育ちにとって、いい園であり続けることが大変な世の中になっているのではないかと感じます。保育士さんひとりひとりの責任も重く、先生たちが心配です。何とかしたいです。

●保育士さんの待遇改善を要望します。また、つめこみの方向での基準緩和には反対です。要員、施設とも、余裕を持った基準としてほしいと思います。

●保育の質向上は、もっとも効果的な未来への投資だと思います。子どもの育つ環境改善のために保育士の待遇改善を願うばかりです。

●教育無償化より待機児童解消、保育士待遇改善を優先して欲しい

●保育士不足が深刻です。子どもの通う園でも4月に一人、5月に一人辞めています。そのうち一人は「結婚」という理由(妊娠ではない)で辞めています。よく言われるように「肉体的にきつい仕事」なのに「給料が低い」ままでは、どんどん現場から保育士がいなくなります。良い保育士が確保できなければ保育の質も下がる一方です。保育の質を高めるためにも、保育士の待遇改善を切に希望します。

●保育園に通ってみると、先生方のすばらしさには頭が下がるばかりです。待遇改善が叫ばれて久しいですが、現状でやられていることは焼け石に水のように見えます。保育士の皆様の待遇改善、社会的地位向上を推進いただけたらと思います。

●保育士がもっと自分の仕事に誇りを持って働くことが出来るよう、保護者の意識改革も必要だと思います。そして、子育てが終わった世代の方も、もっと子どもに優しい目をむけてくれるよう、保育園がうるさいとクレームしないよう、温かい目が社会に浸透しますようにと切に願います。

●保育士の処遇問題については、その殆どが上層部が搾取しているからだと考えます。もっと現場の保育士のもとに適切な給与が払われるよう国は監視すべきであり、経営者が得をするような運営をしてはいけないと考えます。安月給で保育士が使いまわされ、疲れてしまい、二度と保育現場に戻りたくないという声もよく聞きます。逆に看護師は給与が良いため、保育士と比べ働きやすい環境であると思います。そのぐらいの給与保証を望みます。子どもの安全のためには安定した給与、働き続けられる環境であること、人がころころ変わらず、同じ職員が継続的に居ることは保護者にとっても子どもにとっても最高の環境だと思います。現保育士配置にもう少し余裕を持ってもらいたい。0歳は3対1で、9名以上の場合はプラス1名等、1-2歳は5対1にすべきで、15名以上の場合はプラス1名、など、現場がいかに大変かよく見てもらいたい.。

●認可園であっても、どんどん保育士が辞める→残った保育士への負担が増える→保育士の余裕がなくなる→子どもへ目が行き届かない→子どもが安心していられない、というような悪循環を何度も目にしました。ひとりひとりの先生方は精一杯やっているけれど、ひとりの保育士のやることが多く、労働環境が過酷すぎます。子どもの人数あたりの保育士を増やす、保育士の待遇改善が急務だと感じます。今の国の方針や、特に大阪の方針は、保育の質を下げる方向に向かっている気がして、危機感を感じています。(大阪は准保育士の設置などを検討しているが、なぜ「保育士」の資格を持っている多くの保育士が辞め、戻ってこないのか考えないといけない。もっと働きやすい環境になれば、必ず保育士資格保有者(しかも子育て経験者)が戻ってくると思います)

 

[保育の基準・政策について]

●政府の姿勢が、認可外など質が保証されていない園も含めて数だけ整えようとしているように見えて疑問です。安心して働くためには、子どもも安心できるところに預けたいものです。

●保育士の配置基準の緩和はやめてほしい。処遇の問題で潜在的保育士が発生しているのだから、基準の緩和による職員の確保は的外れ。

●子育てにもっと予算を。(保育園から離れますが、育児専業のお母さんたちにももっと育児サポートや金銭的還元があるべきだと思います。育児自体が価値ある仕事だと考えるからです。)保育園が子どもたちにとって良い環境であるよう、場所や人員の確保、それにかけるコストが必要です。保育園への投資は、将来の「善き納税者」の育成につながり、国にも投資以上のリターンがあるというデータを見たことがあります。

●公立保育園へも私立保育園同様補助を出すようお願いしたい。財政難でやむなく公立の運営を委譲する自治体も多くある。大切な子どもの命にもっとお金を掛けて貰いたい。

●一個人としては、保育園がないと会社を辞めざるを得ないのは、行政による解雇だと感じますし、働くために子どもを無認可に預けて子どもが死亡するのは、行政がなすべきことをしなかった代償であり、行政による殺人に近いと感じます(過激な言い方ですが)。会社の管理職として、マネージメントをしている視点では、保育園は子どもの教育の場です。現在の保育指針をすべての園で実践できているとは思えません。保育園は体力増進(健康寿命)のみならず、自己肯定感を高め、チャレンジできる人材(稼ぐ力の高い人材育成)、自分を大切にでき、人を傷つけない人材(犯罪者に刺せない)、など、できることは多いと思います。働く女性の支援という枠を超えて、日本での人材育成という観点で、施設の充実、先生の質の確保は喫緊の課題だと思います。よろしくお願いします。

●親は保育園に預けたいとは思っているが、預けられたらどこでもいいと思っているわけではない。劣悪な環境に子どもを預けたら子どもの成長に悪影響が出るだろうし、最悪の場合は子どもの命も失ってしまうかもしれない。待機児童解消問題のために保育の質を犠牲にすることには反対。保育料が上がってもいいから保育士の賃金を上げて待遇を改善し、保育士の数を増やして質の向上を目指すべき。

●第一に、子どもの命を預かる場だという前提を再度発信して頂きたいです。保育園は小さな組織で、トップダウン経営の所も多くあると聞きます。そんな経営だとしても、園として運営する上で、人員配置等、命に直結する基準が守られる仕組みになる事を願っています。

●まず、私は保育園を義務教育にしてほしいと思っています。その上で、保育の質を高めるために先生方にも保護者にもゆとりある園の運営をお願いしたいです。それが子どもたちに一番役に立つと思うからです。

●園庭のない園が増えており、お散歩をさせるなどの先生方の負担が大きくなっています。人数の削減はできるだけ行わないで欲しいですし、どちらかというと人数を(補助の人を含め)どう増やすかを考えてほしい。最近、保育園の給食の内容の質が明らかに落ちているのが気になっています。保育士の確保が非常に難しく、園の対策としてこのあたりでもっとも給料をよくするという方針で人件費にお金がとられているから、運営面がキツイというのはよく理解しています。保育士の離職が問題になっている昨今、国には、人件費を企業努力であげるだけではなく(企業努力であれば必ずしわ寄せが現場にいく)、援助もしてほしいと思っています。また、保育士の長時間労働を減らすためにも、一般企業で働く人の労働時間を短くする等、すべての人の働く環境を整える方向にますます舵をきらなければ、すべての職場が破たんするだろうなと感じています。

●無償化を進めるのではなく、待機児童解消と、保育の質の向上を求めます。その場凌ぎの対策であり、待機児童解消の実現に向けて、きちんと具体案を持って、政策を進めるべきです。

●すでに決定事項とはいえ、幼児教育無償化には未だに疑問を感じている。保育園はそもそも収入額による応分負担のため、今回の無償化で恩恵を最も受けるのは高所得者層ではないか。また、無償化にすることで、さらに保育園希望者が増え、本当に必要とする人が入れなくなるのではないかと懸念している。その財源を使い、保育の質向上や保育施設の拡充に努めていただきたかった。

●1.量の問題を解決するのに質を犠牲にしないで欲しい。難しい問題であるが故に質を犠牲にする考え方が出てくること自体は理解するが、子ひとりあたりの保育士の人数や面積などは絶対に絶対に手を出してはならない、命にの安全にかかわる領域である。2.保育士の待遇改善についてはオリンピックのボランティアと一緒で、魅力やらやりがいを訴えて解決しようなど考えなしも甚だしい。きちんと給料を上げる予算と仕組みを組んでほしい。3.おむつ問題については親にとっての利便性の問題ではなく、保育所を媒体とした感染症拡張のリスクの話として真剣に捉えて頂きたい。4.SNSなどで「ワクチン怖いから打ってない。ヒミツだよ★」という保育士を見かけることがある。もう少し厳しく取り締まって欲しい。

●保育の質は、決して単なる習い事や保護者の利便性ではなく、青年期になっても保育園の先生方に感謝することがあるような様々な原体験を授けてくれる奥深いものです。そのようにして、きちんと育てられた子どもたちは、社会に貢献できる大人に育っています。もう20年位前から、一部の保護者達は、将来は年金に頼れず自分で働かなくてはならない世代である事を知っていました。今までは、日本は子育ても教育も自己責任でしたから、自分達の親や友人を頼り、タクシー代を沢山払い、時には高額なシッターサービスも利用して何とかやってきましたが、親も高齢化が進み、これだけ多くの方が保育サービスを必要とする時代になると、もはや限界ではないでしょうか。

●保育の質のベースとなる部分、施設基準、人員配置、重大事故を起こさない、という部分はきちんとした枠が必要だと思い、ここは国が基準見直しやガイドラインの徹底をしてほしいと思います。保育内容の質では、子どもの発達についての知識をベースとした子どもへの理解のもとに、実際の保育内容は柔軟にとなるのかなと思ったりします(半ば感想です)。それから保育内容にかかわって、人間関係含めた職場環境も大切かなとと思います。