保育施策に望むこと 〜保育で全面的に子育てを支えて、生み育てやすい社会に〜

保育園を考える親の会は、10月7日に記者会見を開き、「100都市保育力充実度チェック」2020年度版をリリースすると同時に、その結果を踏まえ、国、自治体、社会に向けて、親の立場からの意見「保育施策に望むこと 〜保育で全面的に子育てを支えて、生み育てやすい社会に〜」を発表しました。

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保育施策に望むこと

 〜保育で全面的に子育てを支えて、生み育てやすい社会に〜

 

 「待機児童ゼロ」は当事者の実感と乖離しています。待機児童数のカウント方法を修正し、地域のニーズを正しく把握することを求めます。

・「待機児童ゼロ」のための無理な数合わせは、子育て世帯のニーズを見えなくし、地域の子育て支援策を歪めます。保育を希望するすべての子ども・家庭に保育が提供されることを目標にしてください。

・子どもは一年中生まれるのに、ほとんど4月しか入れない現状も変えなければなりません。保護者の希望、親子の健康状態、仕事の都合、その他さまざまな事情から、保育園に入りたい年齢・時期に入れるようになってこそ、安心して子どもを生むことができます。

・待機児童数算出において差し引かれる「特定の保育園等を希望する者」の内訳を調べ、精査する必要があります。通園距離、保育の質、園庭の有無などで保護者が保育を選択する権利を認めてください。

・当然ですが、利用申込児童数は受理したすべての申請をカウントすることを、自治体に徹底してください。(育児休業延長希望者の数は内数として算出する)

> 育児休業延長希望者のチェック欄がわかりにくく、「入園を希望していて不承諾の場合には育児休業を延長できる」という人が誤ってチェックしてしまい落ちるケースが発生しているので、欄の表記をわかりやすくするか、不承諾通知がなくても育児休業(給付金)を延長できるようにしてください。
> 「育児休業中の者」には、連絡がとれず復職の意思が確認できなかった人を含めないように定義してください。

 

 保育の質を支える保育士確保に全力を挙げてください。

・保育士によい人材を集めるため、保育士の処遇改善を抜本的に行ってください。

・キャリアアップ補助金は一定の効果を上げていますが、安定的に基本給を上げられるように公定価格での保育士賃金をキャリアに応じたものに改善してください(民間施設給与等改善費の切り上げ等)。

・保育士の処遇は保育事業者によっても大きく異なっています。保育事業者は施設の決算情報を開示することとし、人件費率が適正な比率を下回る施設については、自治体が指導するとともに、キャリアアップ補助を停止するなどの措置によって、適正な人件費を執行されるように誘導してください。

・保育士の負担軽減のため、子ども・子育て支援新制度施行前に財源を確保でき次第実施するとされた配置基準の改善(1歳児5対1、3歳児15対1、4・5歳児25対1、平成26年3月28日「第14回子ども・子育て会議・資料1」にて提示)を実施してください。

 

 保育の質を向上させ、子どもの育ちを守ってください。

・わいせつ事件を起こした保育士・教員が、再発防止に十分な期間、資格・免許を再取得できないようにする制度改正を望みます。

・都道府県等による指導監査、市区町村による巡回支援指導を拡充してください。都道府県および市区町村は、保育施設について外形的基準を遵守させることはもちろん、保育内容、特に子どもの心身の健やかな発達を阻害する「不適切保育」等についても厳しく指導してください。このとき、内部告発者、保護者からの情報は積極的に活用してください。

・公立保育所は、地域の児童福祉を率先して担う役割、民間保育施設の支援指導のための人材育成、災害時の保育維持の拠点として、その重要性を増しています。国が、各地の公立保育所を維持・拡充していくための支援を行い、地域格差を縮小することが必要と考えます。