【ボイス VOL.3】ママが挑んだ保育士試験 〜足掛け3年の受験体験記〜

現在2児の母で、3歳の子どもを保育園に通わせている「保護者」でもある私が、保育士試験に挑戦した経験をつづります。

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ママが挑んだ保育士試験

〜足掛け3年の受験体験記〜

 

受験のきっかけ

私は、小売系の会社で正社員として働いています(現在は第二子育児休暇中)。第一子の息子が一歳過ぎた頃に保育園に子を預けて、時短で職場復帰。復帰後の慌ただしい生活の中、子どもが一歳を過ぎ、一歳半、二歳と成長するにつれ、新たな育児の疑問が出てくるようになりました。

「していいこと、いけないことをどう教えるか」など、しつけや他者との関わりの中での接し方に困ることがでてきたのです。

そんな中、とても頼りになったのが、保育士さんたちでした。

 

例えば、2歳頃。自宅でママと二人夕食を食べる時、ママの気を引きたくてわざと食器を落とす行動をしていたことがありました。パパが一緒だと全くしないのに…

園の保育士さんに相談すると、「パパが良い意味でこわい存在。後でパパに叱ってもらうよ、と言ってみるのもいいかも」など、具体的な対処案をもらえました。

そういった「日々新しく出てくる育児の課題」に寄り添ってくれる存在、育児の喜びと大変さを身近に共有できる存在が保育士さんたちで、私にはとても大切な存在になっていきました。

 

そんな保育士さんたちは、どんな知識を持って保育をしているのか、自分の子育てに役立つかもしれないと思い、保育士試験に挑戦しようと決めました。この時は、教育学部出身ということもあり元々興味や多少の知識もある分野だし、勉強すればすぐに受かるだろうと思っていました。

 

 

足掛け3年にもなった受験

受験を決めてから約3ヶ月。講座に通ったりすることはせず、独学で勉強をしようと考えました。まずは書店で保育士試験本や問題集をいくつか購入。片道一時間半の通勤時間を勉強にあて、試験の一ヶ月前からは朝5時起きで机に向かって試験勉強もし、「一発合格!」のつもりで受けたのですが…一言でいうと、保育士試験は「想定をはるかに超えて難しかった」です。

 

試験は、一次試験のペーパーテスト、二次試験の実技から成ります。

ペーパーテストは、保育原理、保育の心理学、社会福祉、子どもの食と栄養などの8科目。すべての科目に合格すれば、ピアノで課題曲を引くなどの実技試験に進みます。

 

ペーパーテストでは、実に様々な角度から保育に携わる際に役立つような知識が得られました。「保育の心理学」では何才くらいでどのような遊びをするのか(例:2才ごろまでは「一人遊び」、3才頃からは他の子と近くで似たような遊びをする「平行遊び」等)。また、集団の中の決まりやルールを守れるようになるのは、だいたい5才くらいからであるなど。だいたいの目安というものが知識として得られます。

これは案外と大きな収穫で、我が子の成長が気になる時には、ともすればネットで検索して出どころの不確かな情報振り回されてしまうこともあるのですが、「大枠でこの範囲が通常」が分かっていると、おおらかな気持ちで子育てできるものです。

 

他にも、「子どもの保健」という科目では、子どもがよくかかる感染症、病気や障害の概要などのほか、障害児との関わり方や「障害の受容について」という内容がありました。もし子どもに障害があったら、親や保護者はどのような段階を得て受け入れていくのか。また、保育士が適切な保護者支援をすることが欠かせないということが書かれていました。園に来る様々な個性や特性を持った子どもたちを受け入れる保育士は、このようなことも学んだ上で現場で仕事をしているのだなと改めて感じました。

こういった知識が得られた点は、保育士の勉強をしてよかったと感じる点です。

 

 

 

落とした一科目翌年の再トライ

わたしが受けた当時、試験の回数は年一回(現在は年二回)。

一年目にペーパーテストで七科目は合格したものの、一科目(教育原理)落としてしまいました。

教育原理というのは、ソクラテスやプラトンに始まり現代に至る窓の教育の歴史や変遷を学ぶ科目…内容はほどほどに面白いけれど、試験は覚えるべき範囲が幅広く、私にとっては難しかった!

一度合格した科目は、三年間は有効となるため、私の場合二年目の受験は落ちた一科目のみに集中して勉強すればよく、楽に受かるはずでしたが

あえなく二年目も不合格。

 

そして迎えた三年目。

試験の4ヶ月前に第二子が生まれ、母乳育児だったため、ベビーと数時間でも離れることができない状況でした。ベビーの昼寝時間を見計らっての勉強。また、過去二回の経験から、参考書を更に買い足してしっかり対策。

試験当日は夫の協力を得て、ベビーと三歳児を連れた一家4人総出(!)で、片道ニ時間(!)かけて試験会場へ。試験会場には、きちんと授乳等ベビー対応のための会議室が一室設けられており、大変助かりました。

試験開始5分前までその部屋で授乳。直前にパパにバトンタッチして、ダッシュで試験部屋へ向かうという状況でしたが…

「ここまでしてるんやから、受からなあかんやろ」という夫の背中から発せられる無言のプレッシャーも逆に良かったのか、結果、一次試験合格!

ほっと一息しつつ、次には実技を披露する二次試験が待ち受けています。

 

 

9割が合格するという実技試験の内容は?

さて、三年目で初めて受けることになった二次試験。

二次試験は実技試験で、わかりやすくいうと、ピアノ等で課題曲を弾いたり(音楽表現)、物語をおはなしをしたり(言語表現)、または色鉛筆を使った課題の絵をその場で描いたり(造形表現)ということをします。この「音楽」、「言語」、「造形」の3つのうち、2つを選択して受験することになります。

私は、比較的自分がこなせそうな「音楽」と「言語」を選択。

「音楽」について、ピアノは小学生以来弾いていなかったのですが、リサイクルショップで5000円で売られていたシンセサイザーを購入して、当時の課題曲「かたつむり」「おばけなんてないさ」を朝食の前に時々練習。(ちなみに「おばけなんてないさ」を弾くと、3歳の上の子が「おばけの歌はいやだ!」と、止めにくるので、子どもの寝ているときにこっそり弾いてました。)

「言語」の方は、「3分以内に課題の<おはなし>を(なにも見ないで)話す」というもの。課題は事前に知らされているので、事前にいくらでも練習ができます。いくつかある課題タイトルの中から、私は「おむすびころりん」を選択。ストーリーをある程度頭に入れて、3分以内に終わらせられればOKだろうと、ある程度肩の力を抜いたまま準備していました。

 

さて、なかなか難しい一次試験に比べて、9割は合格すると言われている、二次試験。

それでも不安な点があります。

それは、一次試験と違って問題集などで事前に自分の実力がチェックできないため、二次試験は「どの程度で合格なのか」がわからないこと。この時期、大手音楽教室の前に貼られている「保育士試験対策のピアノレッスン開講中!」の文字が目に入っては受けた方がいいのかしらと思ったり、はたまた通信講座で販売されている「二次試験の対策ポイントがわかるDVD」が欲しくてたまらなかったりしていました。実際には、まあなんとかなるかな!?と、結局自宅での対策のみで試験当日を迎えました。

実際の試験では、ピアノは和音をいくつかミスしたり、また<おはなし>は持ち時間よりも30秒ほど早く終了するなど、実感として受かったのかどうかがまるでわかりませんでした。

しかし、後日受け取った通知では、合格!

この後、登録を済ませて晴れて保育士資格保有者となりました。そして、保育士は国家資格ですから、一生自分の資格として誇ることができるのです。久々に感じたこの達成感。

足掛け3年の受験は、やっと報われたのでした。

 

保育士試験受験を通じて思ったこと

保育士試験で学べる知識は、保育のベースになることです。例えば、厚労省「保育所保育指針」の存在(お子さんがいる方にはぜひ一度読むことをオススメします!)、子どもの発達心理など。

しかし、どんなペーパーテストもそうですが、現場で即役立つというものではありません。私が保育士さんとのやりとりで教えてもらったような現場に即した対応策は、実際保育に携わる中で経験的に積み重ねられて行く部分が非常に大きいと改めて感じました。

 

例えば、今の自分が資格を得てすぐに園で働けるか?と考えると、子育て経験があるとはいえ、ベテラン先生に数ヶ月付くなどして、実地での研修が不可欠だと感じます。

 

私は保育士試験を受けて学んだ経験から、新たに保育士等の保育者が園等で働き始めるとき、十分な研修の機会が得られるよう、政府や地方自治体が力強く支えてくれるように望みます。

子どもたちが安心して過ごせ、保育士や保護者も協力し合える、いい保育園が増えていきますように。

千葉県(柏市) ミユキング 30代