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保育園がおかしいと思ったとき

まずは保育士と相談してみましょう

子育ての方針をめぐって、保育園や保育士に不満や不信感があったら、まずは話し合ってみましょう。家庭で子育ての方針があるように、保育者にも保育者の方針ややり方、考え方があります。相談として話をすることでその考えの背景が見え納得できることもあるし、意見を聞いて保育士が保育のやり方を見直してくれることもあるでしょう。

「子どもは人質」的な意見を聞くこともありますが、このような考え方は自分も不満をためやすく、子どもにとってもマイナスにしかなりません。保育士と親は子育てのパートナーの関係です。

なるべく冷静に、自分や子どもが何に困っているのかを事実として伝え、いっしょに解決方法を考えてもらう話し方をしましょう。むしろ、そんな理性的な態度が、相手に自分を振り返らせる動機になります。もしも、担任とうまく話し合えなかったら、主任保育士、園長などに相談してみましょう。

保育士の考え方が個人的なもので園の考え方とは違う場合もあります。また、父母仲間や父母会に相談してみると、自分の不満が妥当なのか、問題の核心は何かが整理できるでしょう。自分と同じ悩みをもっている人がいれば、複数の意見として保育士や園に伝えることができます。

苦情解決の方法

園の方針自体に疑問があるときはどうすればいいのでしょう。その保育園の保育内容が妥当であるかどうかは「保育所保育指針」や「第三者評価基準」などのガイドラインで判断できます。

相談だけで問題が解決できずにこじれた時には、苦情を文書にして保育園に提出しましょう。園は保護者の苦情に耳を傾けなくてはならないと法律で義務付けられています(児童福祉施設最低基準第十四条の三)。さらに苦情解決のための第三者委員を施設ごとにおくことも指導されています。

保育園との相談や交渉で解決できない時には、区市町村の担当課に苦情を上げることになります。また、都道府県には「福祉サービス運営適正化委員会」が設置されています。

認可保育所はもちろんのこと、認可外の保育施設でも補助金を受けている施設は、市や区、都道府県などの責任の範囲内にありますから、役所も相談に応じなくてはなりません。

園との交渉、役所との交渉にあたっては、「親の身勝手ではない」ことを客観的に主張したほうがよいでしょう。子どもにとってどうか、親の就労状況が配慮されているか、園の考え方が世間一般のスタンダードなのか、他地域、ほかの園などはどうしているのか、といったことについて、自分の意見を整理したり、情報を集めたりしてみてください。このとき、父母会などの保護者組織、その連合体などがあれば、相談するのもよいでしょう。

ネグレクトや体罰、いじめなどの深刻な問題も絶対に起こらないとは限りません。「お母さんが考えすぎ」「神経質すぎる」などと言われて、なおさら傷つくこともあるでしょう。こういうときには、第三者の機関を探して頼ることも必要です。

子どもと親を助ける法律&制度(保育関係)

保育所保育指針保育所(認可保育園)に求められる基本的な保育内容が示されています。厚生労働省が定める学習指導要領の保育園版。
認可外保育施設指導監督の指針厚生労働省が定めた認可外保育施設への指導監督のガイドラインです。これを参考にして都道府県などが認可外施設の指導監督基準をそれぞれ作成します。保育指針や最低基準に準じた内容になっています。
第三者評価基準第三者機関が施設の運営や事業内容を評価することを目的に、国の雛形にそって自治体ごとに策定された評価基準。保育施設に標準的に求められることがわかります。
児童福祉法子どもの権利とそのための大人や行政の義務が書かれた法律です。保育所等が運営される根拠となる法律です。
児童福祉施設の設備及び運営に関する基準厚生労働省の省令で、保育所等の最低基準を定めたものです。一部は自治体の条例に委ねられましたが、保育所の職員配置や面積基準は国の基準に従うことになっています。第1条の3には大臣の最低基準向上の義務規定が定められています。

 

保育所保育指針

「保育所保育指針」とは保育所(認可保育園)における基本的な保育内容を厚生労働省が定めたもの。2009年4月改定施行より厚生労働大臣告示となり、最低基準に準じるものとなりました。この保育指針をもとに自治体が保育所を指導監督することになっています。

「保育所保育指針」全文(2017年4月1日告示)
「保育所保育指針」解説(平成30年2月発表)

認可外保育施設指導監督基準の指針

認可外保育施設の指導監督は都道府県などが行うため、自治体ごとに異なります。この指針は厚生労働省が作成したものです。この指針をもとに都道府県ごとに指導監督基準が作られます。
指針のポイント:
1.(1)保育者の配置は概ね児童福祉法最低基準に準していること
(2)概ね3分の1以上が有資格者であること
2.(2) 保育室の面積は、概ね乳幼児1人当たり1.65平方メートル以上であること
5.(1)エ.漫然とテレビやビデオを見せ続けるなどの放任的保育の禁止

 

第三者評価基準

福祉サービス第三者評価事業は、福祉施設の運営やサービス第三者が評価することで、サービスの質の向上に結びつけよういうもので、この結果が公表されることにより、結果として利用者のサービス選択に役立つ情報となることをめざしています。社会福祉法第78条第1項には、「社会福祉事業の経営者は、自らその提供するサービスの質の評価その他の措置を講ずることにより、利用者の立場に立って良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなければならないこと」と定められています。
第三者評価基準は、厚生労働省が評価基準ガイドラインを示し、それをもとに都道府県が策定しています。実際の評価は、民間の評価機関が行っており、評価の質にはバラツキがありますが、基準は利用者にとって、保育の質を見るめやすになるものです。

(保育所)福祉サービスの第三者評価基準(全国社会福祉協議会ホームページ)


児童福祉法

児童福祉法は子どもの権利とそのための大人の義務を定めた、保育所運営の根拠となる法律です。

保育関係の条文のポイント:
第24条 行政の保育実施責任
第24条3 公正な方法での利用調整(入園選考)
第45条 自治体が条例で基準を定めるべきことと、その中でも国の基準に下額べきことについて
第48条の3 保育所の育児相談の努力義務
第48条の3の2 保育所保育士の資質向上の努力義務
第56条3 負担能力に配慮した保育料の設定

児童福祉法の全文(e-Gov)

 

児童福祉施設の設備及び運営に関する基準

児童福祉施設について厚生労働省が定める省令で、強制力があります。

保育所関係の条文のポイント:
第3条 都道府県は最低基準を超えた運営をするように施設に勧告できる 2 都道府県が最低基準を向上させる努力義務
第4条 最低基準を超えて常に設備・運営を向上させる施設の努力義務
第7条 施設の職員に求められる資質
第9条 入所者への差別の禁止
第9条の2 虐待の禁止
第9条の3 体罰の禁止
第11条 食事に関する基準
第14条の2 守秘義務
第14条の3 苦情への対応
第32条 保育所(認可保育園)の基準
1 2歳未満には乳児室またはほふく室が必要
2・3 乳児室の面積は一人につき1.65平方メートル以上 ほふく室の面積は一人につき3.3平方メートル以上(厚生労働省通知は、児童がほふく等自分で動くようになれば3.3平方メートル必要と補足している)
5・6・7 2歳以上の保育室の面積一人につき1.98平方メートル以上、屋外遊戯場一人につき3.3平方メートル以上
第33条2 保育士の配置 0歳おおむね三人につき一人以上
満一歳以上満三歳に満たない幼児 おおむね六人につき一人以上
満三歳以上満四歳に満たない幼児 おおむね二十人につき一人以上
満四歳以上の幼児 おおむね三十人につき一人以上
第36条 保護者と密接な連絡をとり、協力および理解を得るように努力すべきこと

児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(e-Gov)

職場がおかしいと思ったとき

会社や上司の無知・無理解で損をすることがないように…

少子化の対策として、育児のための法整備は少しずつ進んできています。しかし、法律をよく知らない上司や人事担当者がいたり、法律に罰則がないなどの理由で知っていても積極的ではないという場合もあります。そんな場合には働く者としての権利、出産・育児をする親としての権利をよく理解して、うまく会社や上司と交渉することが必要になります。「そうは言っても自分のキャリアに傷がついたり、居場所がなくなるのではないか?」「労働者の権利と言っても、うちの会社では無理」という心配もあるかもしれませんが、仕事を辞めたり無理な育児環境を受け入れる前に、制度の活用を検討して、会社や上司に相談・交渉をしてみましょう。

妊娠・出産を助ける労働制度

通勤がしんどいつわりの時やお腹が大きくなってきた時、満員電車での通勤はつらいもの。母子健康法に基づく保健指導(お医者さんの診断書など)があった場合には、時差出勤、フレックスタイム、あるいは一日一時間程度の時短を職場に申請することもできる。(男女雇用機会均等法13条)
通院する時間がない妊婦検診や母親学級などは平日の午前中になっていることが多い。申請すれば必要な時間、仕事を抜けさせてもらえる。(男女雇用機会均等法12条)
立ち仕事が腰にくる邪魔なお腹で変な姿勢になるせいで立ち仕事がつらいとか、寒い場所にずっといるとお腹が張るとか、普段の普段のローテーションがこなせないという場合にはお医者さんの診断書を取るなどすれば、仕事の調節をしてもらえる。(男女雇用機会均等法13条)(労働基準法第65条3)
残業がこなせない請求すれば時間外労働や深夜業を免除されます。(労働基準法第66条)
産後休暇は強制産前6週間(多胎児なら14週)、産後8週が保障されています。本人が働きたいと思っていても産後6週間を超えていて、医師の診断書がない限りは働くことはできません。(労働基準法第65条)


育児を助ける労働制度

子どもが0歳の間の保護

子どもが0歳児の間、母親は「妊産婦」として、妊娠中と同様に残業免除や負担軽減などの制度をそのまま利用できます。その他に、一日2回30分ずつ(またはまとめて1時間)の育児時間を取ることが認められていますが、いまは勤務時間短縮制度のほうがよく利用されています。(労働基準法第67条)
子どもと一緒にいたい民間企業に働く男女社員は、子どもが満1歳になる前日まで育児休業を取得できます。保育園に入園できなかったなどの事情がある場合には、育児休業を2歳まで延長することもできます(不承諾通知、入所保留通知などが必要)。これらは、法律の最低基準なので、法定以上の期間の育児休業制度を設けている会社もあります。(育児・介護休業法第5条)また公務員の場合は、満3歳になる前日までが取得可能期間です。
育休期間中は健康保険、厚生年金保険の保険料が免除されます。また雇用保険より育児休業給付金として、当初180日については賃金の67%、その後は50%がもらえます。
子どもが病気の時未就学児童の親は、その子どもの看護のために年に5日(子どもが2人以上の場合は10日)を限度として看護休暇をとることができます。まで休むことが認められるようになりました。これは子ども一人当たりではなく、労働者一人当たりの日数です。(育児・介護休業法第16条の)
仕事の時間を減らしたい3歳未満の子どもを育てる親(男女とも)は、勤務時間を1日6時間まで短縮できる制度が利用できます。これは法律の最低基準なので、さらに短縮が可能な会社もあります。(育児・介護休業法第23条)また、残業時間についても3歳未満の子どもを育てる親が請求をすれば所定外労働を免除されます。(育児・介護休業法第16条の8)さらに、未就学児の親が請求すれば、法定の1ヶ月24時間、年間150時間の時間制限を超える時間外労働を免除されます。(育児・介護休業法第17条)
深夜勤務の免除未就学児を育てる親が請求をすれば深夜勤務(午後10時~午前5時)が免除されます。(育児・介護休業法第19条)
転勤への配慮転勤により育児が困難になる場合には会社は配慮をしなければなりません。(育児・介護休業法第26条)
不利益取り扱いの禁止事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。(育児・介護休業法第10条)
妊娠または出産・産休を理由としての解雇その他の不利益を禁止する。(男女機会均等法第9条)

子どもと親を助ける法律&制度(労働関係) 

労働基準法

労働制度全般の基準を定めた法律です。

出産・育児関係のポイント:

  • 産前産後休暇
  • 妊娠中の軽易な業務への転換
  • 妊産婦の残業・休日勤務・深夜業務の制限
  • 1歳未満児がいる女性には1時間の育児時間

労働基準法の全文(e-Gov)

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

一般的には「育休法」「育児・介護休業法」などと呼ばれています。

育児関係のポイント:

  • 1歳までの育児休業制度
  • 保育園に入れなかったなどの事情がある場合の1歳半までの育児休業延長
  • 同上の場合の2歳までの育児休業延長
  • 短時間勤務制度(1日6時間勤務)
  • 所定外労働・時間外労働の免除
  • 子どもの看護休暇
  • パパ・ママ育休プラス(父母がともに育児休業を取得する場合、1歳2か月までとする)。
  • 父親が出産後8週間以内に育児休業を取得した場合、再度、育児休業を取得できる
  • 都道府県労働局長は、労働者と事業主の紛争について、必要な助言、指導又は勧告をする

育児・介護休業法の全文(e-Gov)

 

男女雇用機会均等法

正式な法律名は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」。

妊娠・出産・育児に関するポイント:

  • 婚姻・妊娠・出産・育児を理由とした解雇等の不利益な取扱いの禁止
  • マタハラ等に関する相談を受け、必要な対応をする体制づくりなど雇用管理上必要な措置を講じる義務
  • 妊産婦の健康診断・保健指導受診の時間を確保する義務
  • 前項で受けた指導を妊婦が守れるようにする勤務時間の変更、勤務の軽減をする義務
  • 都道府県労働局長は、労働者と事業主の紛争について、必要な助言、指導又は勧告をする

男女機会均等法の全文(e-Gov)