10月4日記者会見「100都市保育力充実度チェック」「withコロナの体制に保育園保護者が求めること」

保育園を考える親の会は、2021年10月4日(月)午後2時より、厚生労働省の厚生労働記者会にて記者会見を開き、2021年度版「100都市保育力充実度チェック」の発表と、アンケートの集計結果に基づく「withコロナ体制について保育園等保護者が望むこと」の意見表明を行いました。

【2021年度版「100都市保育力充実度チェック」調査の結果から】

1 「待機児童数半減」をどうとらえるか

① 「待機児童ゼロ」でも安心感につながらない
入園決定率は80%を超え、各地で入園状況の改善が広がっている(参考資料:充実度チェック記事p.4-5)。しかし、親の会に届く声からは、「待機児童ゼロ」と報告している自治体でも「入園できない不安」はまだまだ大きい。

② 年度途中入園を可能にするため、保育の質やコロナ感染防止のための「ゆとり」を
都市部では、依然、利用調整の指数の低い世帯の利用や年度途中入園が困難になっている現状があり、子育てを苦しいものにしている。また、これまでの「詰め込み」による待機児童対策は、保育の質やコロナ感染拡大防止にも悪影響を与えており、今後は子育ての安心や「ゆとり」をつくる方向での保育整備が考える必要がある。すなわち、
・これまで諦めていた家庭(再就職希望家庭など)が入園できるようにすること
・必要とする家庭が年度途中でも入園できるようにすること
をめざしていきたい。たとえば、4月1日は、面積も人手も余裕がある状態、ゆとりをもった状態で保育を開始できる体制とすることで、保育の質を上げることができ、年度途中入園枠も確保できる。施設の充足率などの数字で行政効率を考えるのではなく、子どものための保育の質や、真に有効な子育て支援をめざした施策が望まれる。

③ 保育所等利用待機児童数調査(10月1日現在)に替わる調査の提案
待機児童数調査は年2回、4月1日時点のものと10月1日時点のものが行われてきたが、令和4年度から10月1日時点での待機児童数調査を廃止することが決定された(令和3年度の地方分権改革に関する提案募集で指定都市市長会が提案し認められた<事例191>)。理由として、待機児童数の算出にたいへんな手間がかかっていることが挙げられている。しかし、なぜ手間がかかるのか、今一度検討する必要がある。待機児童数の算出にあたり、差し引く数の調査に手間がかかっているのではないか。たとえば、通えそうな認可・認可外保育施設を保護者に提示して入園意向を調査する、再就職活動をしているか調査する、育児休業からの復職の意思があるかどうかを調査するなどの業務が嵩んでいることが推測される。
 そこで、保育園を考える親の会としては、年度途中の家庭の現状を把握するための最低限度の調査として、「保育所等保留児童数簡易調査(10月1日現在)」の実施を提案したい。
 保育所等(認可の保育施設)への入園申請数から入園決定数を差し引くだけの単純計算で算出し、年度途中の保育ニーズがどの程度積み残されているかを把握し、自治体の保育の整備計画に反映することが望まれる。

2 「保育の質」にかかわる調査結果について

① 継続する園庭保有率の低下を検証する必要
100市区の調査では、都心部で保育所の園庭保有率が2割を切る自治体が目立つ。周囲の環境にもよるが、保育所保育指針のねらいを達成することに苦慮する現場もある。コロナ禍で散歩を控える施設もあり、子どもの成長発達への懸念を訴える保護者の声もある。園庭がなく、周囲の環境にも恵まれない施設では、保育士の負担が大きく、保護者や子どものニーズともミスマッチを起こしている。このような状況を今後の整備方針の参考にしていただきたい。

② 保育士配置の改善は子ども・現場・保護者の願い
今回、100市区中、保育士の配置基準を国よりも高くしている自治体が過半数あることがわかった(参考資料:充実度チェック記事p.5-6)。これらの自治体では、現場や住民からの要望が施策に反映されているものと考えられる。
 かねてより指摘されてきたように、現行の保育士配置基準は、先進諸国と比べても低く、保育所保育指針の保育を実現するには不足している。子ども・子育て支援新制度検討時には、消費税増税により財源を確保できたら保育士配置基準の改善をすることが予定されていたが、実現しなかった。
 また、今回実施したwithコロナ体制に関するアンケートでは、保育士の負担が増えていることについて心配する保護者の声が多数聞かれた。
待機児童が減少した今こそ、保育士配置の改善へと向かいたい。

<地方分権改革の提案募集についての懸念>
 令和3年度地方分権改に関する提案募集を見ると、114「保育所等における居室面積基準の緩和特例措置に係る期限の廃止」(大阪市)、 115「保育所・認定こども園の分園における休けい保育士、標準時間対応保育士及び主幹保育教諭代替職員の配置 基準の緩和」(大阪市)など、面積基準や配置基準の緩和が提案されている。地方分権は重要だが、自治体が子どもの健やかな育ちや子育ての安心について理解と責任感をもっていることが前提でなければならない。このような提案に保護者は大きな懸念を感じており、このような提案が出る限り、国の基準によって子どもを守ることの必要性を痛感せざるをえない。

「100都市保育力充実度チェック」2021年度版はこちら

【withコロナの体制に保育園保護者が求めること】

1 集計結果の要点

① 園内や保護者に感染があったと答えた回答者は多く、すでにwithコロナの状況がある。
② そのうち半数は全面休園となったが、2回目、3回目には部分休園になった園もある。
③ 休園等の措置について「適切である」「しかたがない」と感じている保護者が多い一方で、休園の有無や期間についての基準があいまいなことや、情報提供の方法に不満を感じている保護者も目立った。
④ 情報提供が少ない施設では、保護者の不満が大きくなる傾向があった。
⑤ 園のコロナ対策としては、行事の削減、家族の体調不良の際の登園自粛要請、手洗い・うがいの徹底、換気などの実施率が高かった。
⑥ 園のコロナ対策についての感想では、保護者は保育士の負担増を気遣い、保育を補う工夫などに対して感謝する声が多かった。同時に、行事の縮小を惜しむ声も多かった。
⑦ 休園や登園自粛が続いた場合、子育ての物理的・精神的負担が重くなることを心配する保護者が8割に達した。子どもの成長への悪影響を心配する保護者も7割近くいた。収入が不足することを懸念する回答は4分の1になった。
⑧ 要望としては、保育施設職員のワクチン優先摂取、PCR検査の実施などへの要望が多く、保護者への情報提供、濃厚接触者の特定などの判断の迅速化なども半数以上が求めていた。

2 withコロナ体制への要望

 アンケート結果から、次のような事柄を国や自治体にお願いしたい。
① 保育施設職員の希望者は速やかにワクチン接種が行えるように支援していただきたい。
② 各園で、感染が発生した場合の対応を、適切に、保護者の協力を得ながら行えるように支援していただきたい。たとえば、アンケート回答に下のような報告があった。このような休園その他の対応の手順や方法、保護者への情報提供や連携の実際などについてのよい事例を、保育施設間で共有できるようにして、適切で迅速な対応につなげていただきたい。
<事例>「まず2週間の休園見込みであること、濃厚接触者へは個別に連絡が入ることが伝えられた。濃厚接触者への連絡が完了した段階で、濃厚接触者ではない保護者にもその旨の連絡が入った。その後、濃厚接触者の検査結果を踏まえて、早期再開の連絡が入った。保健所からの検査結果がまだ届いていないなどの進捗状況の連絡も随時あった。いずれも一斉メールシステムによる。1度目の休園のあとに保護者会と園とで協議があり、情報提供の方法について確認した。保護者の声を保護者会で集約し、園と保護者との間で協議ができる関係性がある」
③ 必要に応じて(基準を明確にして)、職員や園児・保護者などがPCR検査を無料で受けられるようにしたり、園内に抗原検査キットを常備し無料で即時使用できるような体制をつくっていただきたい。
④ エッセンシャルワーカーや、困難をかかえる家庭など、一定要件のもとで利用できる緊急保育を各自治体で実施してもらいたい。国の補助金による支援が必要。
 名古屋市では、休園中でも濃厚接触者ではない在園児を保育する緊急保育を実施している。このほか、拠点的に在園児以外も保育する方法も考えられる。
名古屋市の緊急保育の報道:
https://www.tokai-tv.com/tokainews/feature/article_20210919_11827
⑤ 休園や登園自粛で長期間仕事を休んでも、市区町村は在園児の保育の必要性を継続して認めること、雇用主は雇用上不利な扱いをしないことを保障していただきたい。

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