ベビーシッターの基準についての検討会での発表意見

当会代表が委員として参加する厚生労働省「子どもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会」は、2014年3月17日に発生した男性ベビーシッターによる児童殺害事件の再発防止のためにつくられ、昨年(2019年)3月20日より、ベビーシッターが幼児教育無償化の対象になるにあたり、基準を定めるために再開されました。

現在、ベビーシッターマッチングサイト大手キッズラインのシッターによるわいせつ事件が報道され、再発防止が求められています。そこで、昨年7月の第10回委員会に提出した代表の意見書を改めてここに掲載します。

厚労省サイト掲載PDF

同委員会・議論のとりまとめ


2019.7.4提出

第10回 子どもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会

検討案への意見

委員 普光院亜紀

 「認可外の居宅訪問型保育事業の基準と運用と指導監督の方法の検討」(案)に盛り込んでいただいていることもありますが、まだ確定的な書き方になっていない部分もあり、もっと明確にしたい部分、補いたい部分についてまとめました。

1 指導監査の在り方について

ベビーシッター等の指導監査について、現在の案では年1回の集団指導を原則とし、実地指導については「苦情などを勘案して都道府県が必要と判断する場合」に限るとされています。これに関連して次のようなことも明確にする必要があると考えます。

・ベビーシッター等に関する苦情が都道府県に寄せられることは少ないと考えられるので、償還事務を行う市町村に無償化にかかわる保育事業に関する苦情窓口を必置することとし、苦情・相談があれば、市町村は必ず対応することとする。

苦情の内容が、子どもの安全・人権に関わるものである場合は、苦情・相談者(保護者)の了承のもと、都道府県・市町村による立ち入り調査を実施することとする。

・上記の立ち入り調査、指導等が発生した場合には、全国データベースの非公開部分に記録を残し、自治体間で共有する。

・保護者は実際の保育を見ることができない。また、居宅訪問型保育は密室での個人の保育であるため、不安を持ちつつ苦情といえるほど明確な指摘をできない場合も多い。保護者からはウェブカメラの貸し出しを望む声もある。これをふまえ、利用者の希望があれば市町村は巡回相談支援を実施することを原則としていただきたい。

・集合指導、実地指導で活用するためにも、居宅訪問型保育の特性に合わせた基準(指針)を作成する必要がある。長時間利用時のチーム保育の必要性、安全衛生、事故防止は居宅訪問型独自のものになるが、養護と教育の内容については、保育所保育指針に準ずることとしたい。また、3歳以上児については、可能であれば集団保育による幼児教育の場に通園することを推奨するよう示せないか。

2 全国データベースの必要性

 事業者(ベビーシッター等)の移動、自治体の境界を超えての利用が想定されるため、都道府県ごとのシステムではなく、全国データベース構築することが必要と考えます。本来はこのようなシステムが保育士等に関しても構築されるべきと考えます。

【目的】

① 登録制にした意味を確保し、利用者が安全に利用できるようにする。特に個人のベビーシッターはほかに把握する方法がないことに留意。会社所属のベビーシッターであっても転職等による流動性が高い。

② 市町村が無償化対象の資格の有無を確認する際に利用する。

③ 都道府県・市町村が指導監督等のための情報共有に利用する。データベースの非公開部分に、子どもの安全および人権にかかわる重大な指導、立ち入り調査を実施した場合の記録を残す。改善命令、事業停止命令に至る手続きとしても必要になる。

④ 小児犯罪を起こした者は永久に登録を抹消することにより、子どもの安全を確保する。

【イメージ】<登録ベビーシッター全国データベース>

 
3 ファミリーサポートセンター事業について

 ファミリーサポートは「有償ボランティア」であり、労働基準法、最低賃金法の適用を受けません。これは、提供会員が労働基準法第9条の労働者ではない、つまり労働者性がないと判断されるためです。労働者性がないと判断されるためには、活動が指示・命令ではなく、本人の意思で行われている必要があります。

 ファミリーサポートも他と同様、研修体制を強化するなど子どもの安全を守るしくみをにとりこむことは必要ですが、ボランティアという性格による限界もあると思われ、送迎、短時間の預かりなどの地域の互助活動として妥当な範囲に利用をとどめておくことが必要ではないでしょうか。利用料が安いことから無償化上限額をフル活用したいというニーズのもと無理な利用がされないよう、留意が必要かと考えます。

<参考データベース 図省略>