(2017年4月つうしん掲載)
仕事の後、時間に追われながら子どもを迎えに行くのは、保護者にとって、大変ながらも大切な日課です。その送迎時のルールが変えるという市の方針に、さまざまな議論が広がりました。会員メーリングリストの長い議論を一部割愛して紹介します。
公立保育園全園で、送迎時のルール統一へ
先日、会にご相談をお寄せいただき、当該市に確認したことがあります。他の地域への波及も考えられますので、共有したいと思います。この4月から、横浜市の公立保育園全園で、送迎時のルールが統一的に運用されることになりました。
次のようなルールです。
登園時、保護者は園に着いたら、まずカードリーダーを通してから保育室内に入り、準備や子どもの引き渡しをする。降園時は、子どもの引き取りや降園準備をすませて園を出るときにカードリーダーを通す。
つまり「保育室に入ったときから、出るときまでを保育時間として換算する」ということです。園には滑り込みで通常時間内に着いたけれども、帰り支度をしているうちに延長時間に入ってしまった、という場合は、延長保育料がかかることになります。これまで、横浜市の公立保育園では、園によってルールが異なっていて、保護者があわてないですむように、あまり厳密なことを言わなかった園も多かったようです。
しかし、子ども・子育て支援新制度で「保育標準時間は11時間、保育短時間は8時間」という認定時間枠が新たにつくられたので、市としても認定に応じた運用を、統一的にする必要が出てきたとのことです。必要な職員配置をきちんとするためにも、利用時間の正確な把握が必要になっているという、市の説明でした。特に、カードリーダーを導入すると、ルールをはっきりさせ、不公平にならないようにしないと、保護者側から不満が出るということもあるでしょう。
園や保育士の負担が過重になっている現状からは、止むを得ないかなあ……と思われるルールですが、これが本当に厳格に運用されると、恒常的に困る事態が発生する家庭もあるかもしれないのが心配です。市では、困る家庭については、相談に乗るようにしているとのことです。延長時間に入るか入らないかの瀬戸際に着く人は、子どもを急かしてしまうのではないか、保育士とのコミュニケーションはどうなるのか、保護者同士の交流もできなくなるのではないか、といろいろ気になります。
私は、カードリーダーを通した後も、保護者の責任で子どもを見るという約束で園内に留まってもいいことにしてほしい、保育士から話があるとき、保育士に相談をしたいときは、カードリーダーを通してから時間をとるようにしてほしい、などと思いますが……。皆さんの園ではどうしておられるでしょうか。
送迎時に子どものようすを垣間見られること
こんにちは。W@新宿区です。情報共有ありがとうございます!!うちの子がお世話になっている保育園でも、このカードリーダーの導入が検討されている、と担任の先生から伺いました。
私は18:30のお迎えに、いつも大体保育園に18:20に滑り込み、年少クラスの子を先にピックアップ、1歳児クラスの下の子のお迎えは18:25ごろとギリギリです。しかも、絶賛イヤイヤ期の下の子は、私がお迎えに行くと安心するのか(それから)遊び始める状態で、保育園から無理やり引きはがすようにして毎日帰宅しています。思い返すと一番上の子(現在小学生)も同じで、お迎えに行ってから保育園を出るまでに1時間かかったこともありました。
でも、お迎えに行ってから遊びに夢中になる子どもの姿を見ること、私は結構好きです(時間と心に余裕があるときは、ですが)。あ〜こんな風にお友だちと関わっているんだなとか(お迎え時間が一緒になる子と遊び始めることも多々^_^;)、このおもちゃが好きなんだ〜など発見もありますし、先生とも「困ったものですね〜」なんて言いながら雑談できたりするので。そういうちょっとした保育を垣間見る時間を奪うことになってしまうのではないかな、と思うと残念に感じます。
先生方の夕方の勤務時間に影響が大きいこと、それを軽減するためのシステムなのは理解できますが、厳格な運用は保護者と園の関係をギクシャクさせてしまうようにも感じてしまいます。ということで、私も普光院さんのご意見に賛同いたします!!
趣旨は理解できますが……
遅刻魔のTです。23区の区立認可園でした。2015年度夏ころから、1分単位で延長保育を適応させ始めていました。時間になると時計の前で保育士が待ち構え「(延長保育の)チケット出してください」と言われます。「時間を守る」ことがダメダメな私はいつも走って滑り込みアウト、でした。
ウチの園は子どもの保育室に入ればセーフだったので、まだマシ?かもしれません。子どもの帰り支度してからカードを通すとなると、ちょっとグズグズしてると……ということでもめそうですね。
どこかで諦めたり割り切って、少しでも保育士が余裕を持って仕事できる環境を作らなければ、人も定着しないし、趣旨は理解できます。従うべきと思います。ただ、頭ごなしに一気にキツイルールを決めて締めつけられると、こっちも心情的にムカッときてしまいますね……こっちだって大変なの見てわかるでしょ~!と言いたくなる。
時間になると保育士がサーッと事務室に引き上げちゃって、「園庭で遊ばせないでください」「お迎え後のおしゃべりはほどほどにしてお子さんを見ていてください」「静かに」「園の近くで溜まってないで早く帰って」など言われて(父母会からメールや文書が回ってきたり)親同士の何気ないやり取りやコミュニケーションがしにくい世の中になったよなー、とオバハンは悲しくなっちゃう訳です。
兄弟、卒園児の姿を見せ合ったりする時間としても
豊島区のKです。時間管理、大切です。大切ですが……。
区内の学童クラブでは来年度途中くらいから、学童利用児童のカードリーダー導入の検討が進んでいるようです。
今までにも(指導員さんが)間違って子どもを帰宅させてしまったなどの事例もあり、子ども自身が学童入退室時にピッと通すようにして、保護者のメールに飛ぶ?ようなイメージだと思います。
保育園ではその1分、1秒を争うような運用になってしまうと、保育士は子どもと保護者のようすを感じる暇もないかも。保護者同士でもお互いの子育てについて様子を伺うこともできないかも。保育園の玄関あたりにフリースペースでもあればいいのですが、園庭もないくらいですし。
今までは開所時間が(保育園より)短い学童に先に上の子を迎えに行き、そのあと上の子も通った保育園へ一緒に下の子を迎えに行って、新しいランドセルを保育士や下のクラスの子に見せたり、がんばっている姿を褒められたり、なんていうこともあったものですが、(時間管理が徹底すると)こんなようすも見られないのですかね。そもそも上の子と同じ保育園に入ることも難しいですしね。とっても世知辛いです。
家庭と園、他の家庭との「つながり」にも有益
K@豊島区です。私立認可園です。ウチの子の通う保育園は緩いほうだと思います。毎年「玄関の電波時計で18:15を過ぎたら延長扱い」という注意喚起がなされますが、現実には、18:15ギリギリに駆け込んで「延長のお部屋に移動する前」ならセーフ。延長予定でない子のお迎えが来ていないと、先生が「まだかな~」と玄関まで見に来てくれたりすることもあります。きっちりしたい気持ちと、保護者の事情を汲んでくれる気持ちの間で、保護者寄りに判断してくれている感じです。
わが家は18時前後のお迎えですが、ちょうど紙芝居や読み聞かせが始まったりすると、終わるまで待っている保護者が多数います。子どもがなかなか支度しなくて、お迎えに行ってから帰るまでに30分くらいかかることもよくあります……。
保育者から保護者に引き渡すタイミングは、「保護者が保育室に入って子どもが親を認識した時」と言えます。が、保育室には、子どもたちが描いた絵や積み木の作品があったり、クッキングの写真やお雛様などの季節の飾りがあったりします。保護者がすぐに帰らず、そういうのをじっくり見て、子どもと話したりするのを歓迎してくれていると思いますし、それらを見ながら、子どものようすを話してくれることも多々あります。
玄関のタイムカードで管理されると、保護者が保育室のようすをじっくり見たり、保育士と保護者が話す時間を持つのが難しくなりそうです。
保育室で子どもの帰り支度を待ちながら、ほかの子のようすもわかり、ウチの子以外の子も「大きくなったねぇ~」と思ったりして、保護者・家庭と園・保育士が密につながっているのが、「点」のつながりになってしまいそうな感じがします。
ルールはルールなので、線引きも必要だとは思いますが、時計やタイムカードばかりを見て、子どもを見ないようになったら、さびしいな、と思います。
制度が「保育」軽視にならないように
皆さま、横浜市のKです。私立認可園に第二子を通わせています。うちの子の認可園は(比較的、運営にゆとりがあるからかもしれませんが)幸いまだ、厳格な運用はされていません。
下記の統一ルールは制度が目的化し、本来の目的である『保育』が軽視され見落とされている気がします。保育を通して子どもたちの主体性を伸ばすためには、保育園や保護者の主体性も尊重することが必要でしょう。ちなみに横浜の学童保育(運営委員会方式)は施設ごとに運用・活動の内容が結構異なり、新入者にはわかりづらい点がありますが、各学童で方針を持って取り組んでいることが魅力の1つです。
柔軟な運用で、保育にとって「必要なこと」を維持
板橋のYです。板橋区の私立認可保育園に勤務しています。延長保育は「お金」が絡みますので、やはり利用者や職員によって差異が生じることのないようにした方が良いというのは確かです。しかし、登降園の際には、保育室のようすを見てもらったり、子どもと一緒にお仕度をしたり、保育士その他職員と話をしたりなど、保育にとって「必要なこと」がたくさんありまして、それらにかかる時間は利用者や職員によって異なるものと思います。
当園では、玄関入ってすぐのところにタイムカードリーダーがあって、そこで登降園の時間管理を行っています。
子どもを急き立てることになっていたかも?
H@横浜です。わが家は基本7:30~19:00の利用で、このうち18:30以降は延長料金加算。年に数日7:00から預けて、この30分間も延長料金加算です。今は「保育短時間」(8時間)と「保育標準時間(11時間)」の認定により『延長時間』がそれぞれ違うため、ややこしいですね。
ちなみに、タイムカードは玄関脇にあり、送りもお迎えも保護者が玄関で靴を脱ぐ前のタイミングで打刻していました。「お迎え時の打刻は玄関を出る時」だとしたら、月の半分以上は19:00過ぎとなり、延長料金がさらに増えていたと思います。きっと毎日、子どもを急き立てることになっていたでしょうね。
運用は柔軟にしてほしい
みなさま、ありがとうございます。保育時間のこと、昔からトラブルの多いテーマなので、タイムカード管理というのも時代の流れとしては止むを得ないのかなと思いましたが、厳格に運用されてしまうと、保護者にとって(最終的には子どもにとって)痛手が大きいことがわかりました。ここに書いていただいた「ここが困る」はまとめて、メーリングリストにフィードバックするとともに、市にもお届けしようと思います。
自治体や保育園にお願いしたいこと
保育時間管理を厳しくすることで保育時間が少しでもコンパクトになれば、保育士の変則勤務が緩まり、負担軽減になることも期待できます。
でも、送迎は、保育園と家庭の接点なので、ここのゆとりをカットするのは、子どものためにもならない恐れがあります。保育所保育指針も送迎時を保護者支援の機会として活用するように示しています。硬直的な運用は、保育園の子育て支援機能の低下にもつながります。
行政や保育園へのお願いとしてまとめると、
お迎えの打刻をした後の時間、子どもは保護者の責任で見るという約束のもとで、子どもにゆっくり準備をさせたり、保育室にあるものを見ながら話し合ったり、保育士さんやほかの保護者ともコミュニケーションをとったりできる時間を保障していただきたいと思います。
もちろん、保護者の側も、できる人はなるべく早くお迎えに行く努力をしなければならないと思います。そのためには、職場のワークライフバランスが一層進むことが期待されます。
子どもの事故防止の観点からも検討を
Tです。まとめ、ありがとうございます。皆さんの投稿、興味深く拝見しました。
私自身は、下の子が保育園を卒園してしまい、保護者の気持ちとちょっと距離ができてしまっているかもしれないのですが、登退園の時間管理については、事故防止の観点から、引っ掛かっています。
日常、保育士さん対象に保育施設での重大事故防止の講義をしています。その際に、
「迎えの時間などの、保育士と保護者と、どちらが見ているかあいまいな時間は要注意ですよ。親が来ても、対面で引き渡すまでは保育園の責任(動静把握義務)、親に引き渡したら、園内であっても保護者の責任などの切り分けを、園内で周知してください」という話をしています。
「あ、お母さんだ!」と子どもが部屋から飛び出していっても「何時何分、お母さん迎え」とチェックしてはいけない、迎えにきた保護者に「引き渡した」という確認をするまでは、子どもがどこで何をしているか把握するのは保育園の責任、ということを話しています。
それでも、保育園としては引き渡した後の子どもが、園内ではしゃいでいて、保護者は、他の保護者としゃべっていて、子どもの動静を全く見ていないことが多く見られて、ハラハラしている、という話を全国あちこちで聞きます。
親が迎えにきて、子どもがハイテンションになっているのに、親が子どもを見ていない間に、まだ、預かり中の子どもとトラブルになったり、衝突や転倒でけがをしたり、という場合に、誰が責任を負うのでしょうか。
結局保育園がリスクを負うので、引き取ったら速やかに帰ってほしい、あるいは、引き取ったら、自分の子どもから目を離さないでほしい、というのは、保育園としては、まじめに、子どもを見ていればいるほど、切実な欲求なのだと思います。実際問題として、口を酸っぱく言っても、<引き取った自分の子どもから目を離さない保護者>ばかりではない、というのは、日々、保育園で目にする姿ですよね。
保護者が先生とコミュニケーションを取りたいのであれば、時間的余裕をもって迎えに行く、あるいは、アポイントをとって、先生が態勢をとれるように配慮する、ということをしないと、子どもたちの安全は守れないのではないかと思います。
私自身は、保育園での重大事故を多々見てきて、自分の子どもの担任と話をするときでも、先生が子どもたちに背を向けない向きに立つ、とか、先生の保育の邪魔をしないように、とか、そういうことが気になってしまって、下の子のときは(下の子だから、というのもありますが)、保育室にいる先生とは、あまり話をしなかったなぁ、と。
タイミングとしては、先生が事務室にいるときに掴まえて、いろいろ話を聞くようにしてました。それも、事務時間を奪ってたかもしれませんが。
そういう背景からすると、カードで登退園管理をして、保護者に保育時間を意識してもらうとか、その時点で、園内にいる子どもの人数が明確化されるので、それに見合う保育士を配置する、とかいうことも、必要なことなんじゃないかな、と思います。こちらは1人、あちらは多数を受け持っている、ということや、先生の第一義的な仕事は、子どもを安全に見ることだということは、忘れないでいたいなと思いました。