2013年11月13日
提出先:厚生労働省育成環境課
保育園を考える親の会
代表 普光院亜紀
就労家庭が子どもの放課後に求めること
子ども・子育て支援法は、第59条第5項において、市町村は、市町村子ども・子育て支援事業計画に従って、地域子ども・子育て支援事業としての放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)を実施することとしています。
しかし、首都圏の自治体には、放課後児童クラブを、放課後こども教室や全児童対象事業(単独事業)に吸収させるところがあり、以下のような問題が発生しています。これについて、就労家庭の立場からの要望をまとめましたので、ご対応いただきたくお願い申し上げます。
【放課後こども教室・全児童対策事業との合体によって生じている問題】
一般児童と留守家庭の子どもの区別をなくす形で実施するところでは、生活の場としての要件が満たされない環境となっている。すなわち、
1) 専用室がないために,多数の登録児童が出入りする喧噪な環境となり、休息も宿題もできない。
2) 定員がないため、一人の指導員が担当する子どもの数が非常に多くなっているものがある。なお、集団の規模が大きい場合、たとえ指導員をふやしても、子ども一人一人と指導員の安心できる関係の構築には至らないため、子どもの情緒の安定を図る養護の機能が失われている。
3) 「遊び場事業」等の位置づけであるため、指導員に養護の役割を担わせる意識が主管課になく、人員配置、適性の判断、研修などが不十分になっている。
4) おやつが廃止されたり遅い時間になったりして、子どもによっては「飢餓状態」になり、養護の機能が失われている。
【放課後こども教室・全児童対策事業との関係で要望すること】
1) 「帰りたくても家に帰れない子ども」(就労家庭その他の放課後児童健全育成事業を必要とする子ども)には、市町村が放課後こども教室や全児童対策事業を行う場合であっても、別途あるいは併設で、次の養護的機能を備えた放課後児童健全育成事業を提供することを義務づけてください。
a. 指導員が子どもにとって頼りにできる大人となり、一人一人の子どもの心身の状態や友だちとの関係に目配りができること(指導員の配置・資質、集団の規模)
b. 子どもが休息をとれる環境
c. 子どもが宿題その他一人でやりたいことができる環境
d. おやつの提供
e. 家庭との連絡や連携をとれる体制
2) 前項を実現するためには、放課後健全育成事業と放課後こども教室・全児童対策事業を併設して行う場合も、放課後児童クラブとしての専用室もしくは専用スペースを設けることを原則とし、現在設けていない事業もできる限り速やかに設けるように時限的に義務づけてください。
*この場合、専用室・専用スペースを家庭の代替場所とし、放課後こども教室・全児童対策事業に子どもが出かけて遊ぶという考え方をとれる運営体制を組んでもらいたい。
【既定のガイドラインの水準に誘導する施策を】
添付の会員アンケートの結果からも明らかなように、以前から、放課後児童クラブには施設環境や指導員の質に問題があるものが多く、就労家庭として安心して子どもを通わせられない状況がありました。子ども・子育て支援新制度によって、これらの状況が大幅に改善されることを、就労家庭の保護者は切に望んでおり、現在、開催されている放課後児童クラブの基準に関する専門委員会での議論にも注目しております。
専門委員会の議論を拝見すると、既定のガイドラインを新しい基準の基本とする視点をもちながらも、放課後児童クラブの現状との落差に苦慮されているように見えます。しかし、これからますます増加する就労家庭が安心して子どもを通わせることができる放課後児童クラブをふやすことは非常に重要です。全国の放課後児童クラブが既定のガイドラインの水準で事業を実施するよう、国としてしっかりした基準や指針を設けるとともに、自治体に対する支援・誘導策を実施するようお願いいたします。また、文部科学省にも、「放課後子どもプラン」の検討にあたっては、就労家庭の実情を十分にご理解いただけるよう、共通認識の醸成を図ってください。
なお、「放課後子どもプラン」事業において一般児童との公平性を謳っておやつを廃止するような意見が見られますが、真の意味での公平は、放課後児童健全育成事業を必要とする児童が安心して生活できる支援を提供してこそ実現するものであることを、改めてご確認いただきたいと思います。
以上