保育園見学に行く前に候補園リストをつくる

市区町村の役所の保育担当窓口で、保育園についての資料をもらいましょう。専門の相談員がいるところもあります。役所のホームページでも保育園の一覧が公開されています。

リストアップの条件

  • 通園事情→自宅から通える園はどこか。
  • 受入月齢→預けられる年齢・月齢はいつからか。(産休明けから、1歳からなど)
  • 開園時間→通常の保育時間、延長保育の時間は、何時から何時までか。

ポイント

  • 就労時間+通勤時間を考えて、間に合う園を候補に。
  • 交通手段は何を使うか(徒歩、自転車、車など)によっても、候補の範囲は変わります。
  • 自転車の場合は、天気が悪いときにどうするかも考えておきます。
  • 遠回りしたり、違う駅の利用も考えて、候補はなるべく広く。
  • 地域の保育園が厳しいときは、勤務先近くで探す人もいます。

さあ、見学に行きましょう!

「保育園選びのポイント」は、「保育園見学のポイント」といっても、言い過ぎではありません。それは、見学のアポイントをとる時の対応から始まっています。

  • 快く見学をさせてくれるか。
  • お昼寝の時間帯ではなく、子どもたちが活動している時間に見学させてくれるか。
ポイント
  • 2つ以上の施設を見学すると、それぞれの園のよさや違いがわかってきます。
  • 時間帯を変えて複数回行ったり、行事を見せてもらうと、より園の様子がわかります。
  • 保育園の送り迎えをしている保護者に突撃インタビューをした人もいました!

<コロナで保育園見学にも制約> 2020年8月6日補足

コロナの感染が広がっている地域では、在園児の保護者でさえも園内に入れなくなっている園もあり、園見学はかなり制約されています。わが子が毎日過ごす園を選ぶのに、実際の保育を見られないのは困ったことです。ダメ元で、次のようなことも試みてみましょう。

① 園に連絡をとり、園見学の可否、できない場合は何か代わりに行うことを計画しているか、保育内容などを知りたい場合はどうすればいいか、率直に聞いてみましょう。説明会や動画配信、資料提供などをしてくれる園もあるはず。保護者への対応からも、園の姿勢を感じることができます。ただし、きれいな動画がつくれる園がよい園ではないので、ウェブサイトや動画を参考にするときは演出にだまされないようにしてください。

② とにかく現地に行ってみましょう。中に入れなくても、外から園舎や園庭のようすを見るだけでもわかることはあるはずです。園庭遊びなどが見られたら、少しは安心できそうです。

③ 散歩先の公園で保育のようすを見るのもよいでしょう。保育士が子どもにどう関わっているかが最も重要です。安全を確保しながら、子どもが自然とふれたり、自分から楽しんで体を動かしたりすることを大切にしているか、歩きながら子どもにどんな声がけをしているか、など注目してください。

④ 地域の口コミも集めてみましょう。子育て支援センター、子育てひろばなどは情報が集まりやすい場所です。

⑤ 第三者評価の結果が公表されていれば参考にしてください。東京都の場合は、福ナビで見ることができます。第三者評価は評価機関によって評価にズレがあり、施設同士の比較には向いていませんが、園の概要を把握することができます。

見学でのチェックポイント

「 」は案内者への質問のしかた。

職員体制

  • 配置:クラスの子どもの人数と担任の先生の人数は?
    *保育園には、子どもの年齢ごとに保育士の配置基準があります(別表参照)
    *実際に保育室を見たとき、聞いた人数よりも保育士が少なかったら理由を確認しましょう。
  • 資格など:「担任の先生は全員常勤ですか?」「みなさん、有資格者ですか?」
    *認可外保育施設の場合、有資格者の割合が少ない場合があります。
  • 経験など:「先生の平均年齢は何歳くらいですか?」「いちばんベテランの方で何歳くらいですか?」
  • 看護師:「看護師さんはいらっしゃいますか?」「看護師さんは常勤ですか?」

保育のようす

  • 保育士の子どもに対する言葉づかいは優しくていねいか。子どもたちに笑顔で接しているか。
  • 子どもたちは生き生きしていて、笑顔か。
  • 子どもが泣いたり何かを要求したとき、抱っこしたり、向き合って話したりしているか。
  • 保育士が子どもを傷つけるような叱り方、乱暴な扱いをしていないか。
    *保育士と子どもの会話に耳ダンボ。子どもが失敗したりけんかしたときどうするかにも注目。
  • 「SIDS(乳幼児突然死症候群)対策はしていますか?」と質問してみる。「うつぶせ寝はしない」「うつぶせ寝するときはそばについている」「定期的に呼吸をチェックしている」などの答えがあれば、OK。

給食・食育

  • 離乳食の進め方:「離乳食はどんなめやすで進めていますか?」
    *家庭の方針と合っているか、違う場合は、園の考え方を聞いて納得できるかを確認します。
  • 献立のバランス:「献立表を見せていただけますか?」
    *どこの園にも献立表はあります。
  • 食材:「食材の仕入れで気をつけていることはありますか?」
  • アレルギー対応:「アレルギー対応はしていただけるのですか?」
    *アレルギー対応の除去食は、医師の診断書に基づいて行うよう行政指導がされています。
  • 給食や食育の方針:「給食ではどんなことを大切にされていますか?」「食育はどんなことをしていますか?」
    *食育は、楽しく食べる体験が一番重要ですが、栄養や体の話や食べ物がどこからくるのかという話を聞いたり、野菜等の栽培、収穫、クッキング保育などの活動があります。
    *弁当持参がある場合は、頻度や理由の説明を聞きましょう。こども園などでは弁当/給食選択制の場合もあります。

施設環境

見学のときは必ず、保育室の中まで入って見せてもらいましょう。トイレやシャワールームも、見せてもらいましょう。

  • 0~1歳児の部屋は幼児の部屋と分かれているか。(認可外で特に注意)
    *赤ちゃんが安全に活動し、静かに眠れる環境は整っているかは、重要です。
  • 室内環境:日当たり、風通しはよいか。
  • 子どもが過密になっていないか、十分に動き回れる広さがあるか。
    「保育室の広さは基準どおりですか?」と聞いてみてもよいでしょう。*基準よりも広いほうが望ましい。
    *保育園の保育室の面積には、最低基準があります。
    *子どもが狭いところに詰め込まれるとストレスがたまるし、危険です。

認可保育園の面積基準

1人当たり。単位は平方メートル。
[0-1歳児]3.3ハイハイしない赤ちゃんは1.65としているが、すぐにハイハイするので3.3必要)
以前0歳児は5だったため、5を保持している自治体もある。
認証保育所(東京都の助成を受ける認可外)は、原則は認可と同じだが、A型(駅前型)は2.5まで受入可。
[2歳以上児] 1.98 + 屋外遊技場3.3 ただし近くの公園で代替可。

  • 安全対策:ドアの指はさみ防止策、高い棚等の転倒防止策、子どもの頭上から物が落ちないか。
    *ハンガーやフックの位置にも注意。→子どもがフックに引っかかってケガした事件がありました。
  • 衛生面:掃除はいき届いているか。吐瀉物の処理等に使う消毒(漂白)剤などが常備されているか。沐浴設備やシャワーなど、体を清潔にできる設備はあるか。
  • 教育的環境:おもちゃや絵本の質はどうか。子どもが自分で選んで遊べるようになっているか。
    *赤ちゃん期を過ぎたら、子どもがおもちゃを自由に取り出せたりしまえたりできて、自分の意志で遊べる環境が、教育的に質の高い環境です。(コラム参照)
  • 園庭:砂場はよく使われているか(砂場用品などのようすでわかる)。夏の水遊びはできているか。*園庭がない場合は、「お散歩は毎日行きますか?」「どこに行きますか?」など、外遊びができているかチェック。

親に対して

  • 連絡帳:「連絡帳はありますか?」
    *子どもの保育園での様子、自宅での様子を、保護者と保育士が共有するために必要です。
    *0・1歳児は食事や就寝の時間を記入する形になっています。
  • 保護者行事:「保護者懇談会や個人面談などはありますか?」「いつごろどんな形でやっていますか?」
    *年間行事を一通り説明してもらったり、行事表をもらえたらもらっておくとよい。
  • 費用:認可外の場合は、保育料や別料金について明朗になっていることが重要。
    *認可保育園の保育料は、自治体ごとに所得に応じた料金が決まっていますが、補食代、主食費、帽子代などが必要な場合もあります。(横浜保育室は、認可保育園同様、所得に応じた料金が決まっています。)
  • 案内者(園長・主任など)は、母親が働くことを応援してくれているかどうか。
    *産休明け、早期育休明けで復帰する母親に対する理解と協力があるか、話しているとある程度わかります。
  • 案内者(園長・主任など)は、保育の専門性をもって話してくれるか。
    *専門性の高い保育者は、保育の方針を子どもにとっての必要性(発達や心理)から説明できます。(親の希望通りにします、というのではなく)

その他

  • 第一印象・全体の雰囲気も大事!
  • 園内の掲示も見ておくと参考になる。
  • 子どもの持ち物も観察(入園準備に役立つ)
  • 緊急時の連絡方法、発熱時の対応(呼び出しの目安など)
  • 使用するおむつ

【コラム】気になる「教育」

 就学前の教育は、学校のような教科教育の手法ではなく、生活や遊びの中で、子ども自身の主体的な活動を通して行われるのが効果的であるとされています。それを証明する、こんな研究結果があります。

  • 鹿屋体育大学・森司朗教授の研究グループによる1万1500人の幼稚園児・保育園児の調査。運動指導を行っている園と行っていない園では、行っていない園のほうが園児の運動能力が高かった。
  • 東京学芸大学・杉原隆名誉教授の研究チームの9000人の幼稚園児の調査。マット運動や体操などの体育指導をしている幼稚園、していない幼稚の園児の運動能力を調べたところ、体育指導のない園の園児のほうが点数がが高かった。

なぜこんなことが起こるのでしょう。それは、この時期の子どもは自分から夢中で遊ぶ活動の中でこそ、心身の全機能をフルにつかうのであり、それによって発達がバランスよく促進されるからです。言葉や仲間とかかわる力(自己主張の力、自己抑制の力、共感する力、社会性)も、仲間とも真剣な遊びの中で育まれる部分が大きいのです。大人の指示で子どもを並ばせたり椅子に座らせたりする時間が長い保育は、教育的な観点から必ずしも質が高い保育ではないことも頭に入れておきましょう。

文字や数の教育などが気になる人は、見学のときに質問してみるとよいでしょう。年長児くらいになると、子どもが遊びの中で楽しみながら文字や数に関心をもったり自分からつかったりする機会を意識的につくっている園は多いはずです。

普光院 亜紀(保育園を考える親の会顧問)