放課後事業に望むこと

提出先:
厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課
文部科学省生涯学習政策局生涯学習推進課
都道府県放課後子どもプラン担当課
21市区全児童対策事業担当課

保育園を考える親の会
代表 普光院亜紀

【意見書】
放課後事業に望むこと

 

小学生の放課後について、これまでも国の放課後健全育成事業(留守家庭を対象とした放課後児童クラブ=学童保育)と、自治体独自の全児童対策事業(全児童を対象とした放課後対策事業)が行われてきました。

国では、昨年「放課後子どもプラン」を発表しましたが、これは従来より行われている自治体の全児童対策事業と共通の特色をもつことが予測され、これらについて、「保育園を考える親の会」では、子どもたちの生活実態にねざした、さまざまな意見が出されております。

いまだ自立の途上にある子どもたちにとって、切実な問題を含んでいることから、これらの放課後事業について、次のような点にご配慮をいただきたく、お願い申し上げます。

この文書における放課後事業の定義

  • 放課後事業:ここでは、下記のすべてを包括してこのように呼びます。
  • 放課後児童クラブ:国の放課後児童健全育成事業によるもの。共働きなどの留守家庭の子どもを対象としており、「学童保育」と通称される。
  • 全児童対策事業:自治体ごとに、全児童を対象に小学校で実施されている放課後対策事業で、世田谷区の新BOP、横浜市のはまっこふれあいスクール、川崎市のわくわくプラザなど、自治体が独自に実施しているもの(中には国の放課後児童健全育成事業、地域子ども教室の補助金を受けてきたものもある。保育園を考える親の会「全児童放課後対策事業アンケート」参照。)
  • 放課後子どもプラン:平成18年5月に国が発表した放課後事業。厚生労働省の放課後児童健全育成事業と、文部科学省の放課後子ども教室推進事業を「一体的あるいは連携して実施する」もの。

基本的な希望

  1. 今、子どもたちの間でさまざまなデリケートな問題や事件が発生していることに目をむけ、放課後事業が子どもたちにやさしい施策となるよう、国・自治体のさらなるご尽力をお願いします。
  2. 子どもには、成長に応じた養護(生活面の支援、安全・安心を守られること)が必要であることを確認し、子どもが徐々に自立していく「ゆるやかな離陸」を支援するという視点を入れていただくことをお願いします。
  3. 子どもが置かれている状況には、さまざまな差異があることに着目し、保護者の就労その他の状況に応じた支援を保障する必要があることを、あらためて確認していただきますようお願いします。
具体的な希望

1)生活場としての施設・設備の整備
放課後事業には、遊び場であると同時に居場所や生活の場として機能することが求められると思います。ついては、次のことが必要と考えます。

  • 居室に隣接もしくは近接したトイレを設置する
  • ロッカーなど私物を置ける場所を確保する
  • 休息がとれるスペースを確保する
  • キッチン(水道・ガス)を設置する
  • 図書・玩具を設置する
  • 安全対策を徹底し、事故・ケガのときの対応などが迅速に確実にとれる体制をつくる(特に複数の事業が同じ場所で行われる場合の連携・責任分担)

2)大規模化への対処
自治体の実施する全児童対策事業は定員を設けない事業であり、その一部では、大規模化が問題になっています。大集団の喧騒、人数に見合った居室の確保ができない、指導員の目や手が行き届かないなどの問題です。就労家庭の子どもなど、その場から逃れられない子どもたちにとって、これは深刻な問題です。雨天で校庭が使用できないときの利用実態など、精査が必要です。ついては、次のことが必要と考えます。

  • 拠点となり常時使用できる居室は人数に見合った広さで確保する
  • 利用する子どもの人数にあった指導員数とする

3)指導員の質の確保
地域のボランティアなどの支援は非常に有効と思いますが、同時に、専門知識や経験をもち継続的に子どもを見ることができる指導員を配置することも必要です。子どもの発育や心理を理解し、遊びの質を高める技術をもち、ときには子どもや親のカウンセラー、ソーシャルワーカーともなれる人材が配置されれば、地域の子育て支援資源として、非常に有効なものとすることができると思います。ついては、次のことが必要と考えます。

  • 指導員に必要な資質を明らかにする
  • 継続的に子どもとの関係を築ける勤務形態とする

4)子どもの自主性な遊びを保障すること
今、学校では授業を受け、放課後も塾や習い事に通うという生活の子どもがふえていますが、この時期、子どもが自主的に、自由に遊ぶという機会を失っていることは、「自ら考え行動する」「思いやりやコミュニケーション能力を培う」といった教育的観点からみても好ましいとは思えません。ついては、次のことが必要と考えます。

  • 子どもが自由に自主的に遊べる時間を確保する
  • 大人が仕切るイベントや活動で時間を埋めない

5)学校との連携、学校設備の有効活用
これまでも放課後児童クラブでは、学校との連携が課題になっていました。また、学校内に設けられる事業であるメリットも活かすとすれば、次のことが必要と考えます。

  • 行事や下校時刻などの日常的連絡体制を整える、子どもの健康状態や気になる問題について担任や学校長と連絡を取り合えるようにする、連携して防犯体制を整える
  • 拠点となる居室のほかに、校庭、図書室、体育館、保健室などの学校施設が利用できるようにする

6)地域人材の活用、保護者の参画、地域関係づくり
本来、地域全体が子どもの居場所でなくてはならないのであり、そのためには、地域の大人同士、大人と子どものかかわりの機会がふやすことが有効です。また、放課後事業ごとに、子どものための場作りをともに行っていくという考え方に立ち、保護者参画のしくみをつくることも必要と考えます。

  • ボランティアの地域人材を活用する
  • 自主的な保護者組織やPTAなどによる保護者参画のしくみを支援する
  • 子どもが地域にかかわる活動をとりこむ

7) 就労家庭等、放課後事業に家庭の機能の代替を求める子どもへの対応
バリアフリーにはスロープが必要であるように、子どもの家庭等の状況が異なっている場合、足りない部分を補完して初めて、子どもにとってのバリアフリー(すべての子どもの安心)は成り立ちます。「すべての子どもに」というかけ声のもと、一人ひとりの子どもの状況を見ない施策にしてしまうことは避けなくてはなりません。ついては、次のことが必要と考えます。

  • 放課後事業に家庭の機能の代替を必要とする子どもに関して、1)のような環境の整備に加え、出欠管理と欠席時の保護者への連絡、宿題をできるスペース、おやつの提供、連絡ノートなどの養護的機能を整える
  • 指導員の職務として、子どもの心を受容し、生活面、心身の変化、人間関係などの個別の状況に目を配り、必要な支援をすることを含める

8) 障害児・配慮を要する子どもへの対応
障害をもつ子ども、配慮を要する子どもにも安心できる環境を保障することが必要です。放課後児童クラブ(学童保育)が全児童放課後対策事業に吸収された地域で、障害児への対応が後退して例がすでに発生していますが、それは許されないと考えます。今後の放課後事業では、障害児への対応をより充実していくよう、方針を明確にすることが必要です。

  • すべての放課後事業で障害児への対応を行う

9)その他の居場所も選択できる地域に
放課後子どもプラン等の実施により、他の居場所の選択肢が削減されることは、「合わない子ども」の居場所がなくなったり、子どもの地域生活を単調なものにする恐れがあります。全児童対策事業では高学年の利用が少ないという現象も見られ、子どもの居場所の選択肢はなるべく多様であることが必要と考えます。

  • 児童館等の事業も充実させる
  • 学校の外の放課後児童クラブ(学童保育)も維持向上させる

運営方法について

上記の7)や8)は、放課後児童クラブ(学童保育)が担ってきた部分です。放課後子どもプランの中で、放課後子ども教室と放課後児童クラブが一体的に運営されるという場合、もしくは、自治体の施策の中で全児童対策事業と放課後児童クラブが一体的に運営されるという場合、放課後児童クラブが担う機能(子どもがその年齢や状態に応じて、十分な養護が受けられる)が抜け落ちてはならないと思います。

放課後子どもプランや全児童放課後対策事業が、今後どのように運営されていくのかは、国や自治体の施策にかかっています。放課後児童クラブが学校という場所で開放的に運営される(クラブ外の子どもとも遊べる)ことはよいことですが、その場合も、放課後児童クラブの機能はしっかりと維持できるような運営方法を考えていただく必要があると考えます。

以上

参考資料

  • 2006年自治体への調査「全児童放課後対策事業アンケート(20市区)」
  • 2006年会員アンケート「放課後子どもプラン・全児童対策などの放課後事業について」
  • 機関紙「つうしん」116、117投稿放課後の子どもと家庭責任
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